アカテガニ及びクロベンケイガニ由来ラッカーゼについて、大腸菌での発現、活性測定を試みた。両者ともシグナル配列を取り除いてから、大腸菌での発現を行ったが、封入体の形成が軽減されることはなかった。可溶画分にもある程度の発現が見られたため、そのままHis-tagを用いた精製を行った。結果として酵素の精製は可能であった。しかし、十分な活性が得られたとは言えない。陸ガニ本体の酵素活性と比較すると非常に低い(10%以下)の活性しか検出できなかった。このことについて現在興味深い仮説を検証中である。それは酵素のN末ドメインが活性を抑制しているというものである。同様の銅結合タンパク質であるヘモシアニンにおいてはそのような報告がある。当該ラッカーゼにおいてもその可能性があるため、N末ドメインを除去すれば、強い活性を得られる可能性がある。また、植物食による活性増強においては、RT-PCRの解析の結果から転写レベルではなく,酵素レベルでの活性増強の可能性が強く示唆されている。ここに上記N末ドメインの関わりも推測されている。現在N末除去の効果を確認中である。 もう一つのリグニン分解関連酵素の候補であったグルタチオンパーオキシダーゼについても興味深い結果が得られた。大腸菌での生産はラッカーゼほど十分ではなかったが、活性については明らかに検出することができた。この酵素はグアヤコールを過酸化水素で参加することができた。生産量が低いのは活性部位のセレノシステインの取り込みが大腸菌では不十分だからであろう。今後昆虫細胞を利用する予定であり、多くの生産ができればリグニン分解への応用も期待できる。
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