微生物が有機化合物の代謝により得るエネルギーは、最終的にバイオマスと熱エネルギーへと変換される。そのため、微生物の熱エネルギー生産を制御することによりバイオマスの生産量の制御が可能となる。バイオマス生産を伴わないエネルギー消費である浪費回路の制御は、微生物の熱エネルギー代謝の制御につながると考えられる。そこで、本申請では、マイクロカロリーメーターを用いた微生物の代謝による発熱の詳細な測定と、遺伝子組み換えによる浪費回路の調節により、微生物のエネルギー代謝を制御する方法論を確立することを目的としている。これまでに、発熱量を指標とした微生物の探索を行い、生育温度により浪費回路による発熱量が変化する微生物(P. putida KT1401)を単離した。また、この微生物の浪費回路を介した発熱には、尿素サイクル中の酵素Ornithine carbamoyltransferase (OCT)が関与していることが示唆されている。そこで、P. putida KT1401株のOCT遺伝子及びその調節機構について明らかにするために、P. putida KT1401株の遺伝子解析を行った。また、他の浪費回路に関連した代謝経路について調べるために、ランダムミューテーションにより作成した変異株について生育温度と発熱量の関係について調べ、浪費回路による発熱が観測されない変異株を得ることができた。さらに、P. fluorescens PAO1株についても発熱量測定を行い、sn-Glycerol-3-Phosphate Dehydrogenasの欠損により熱エネルギー生産量が増加することや、多剤耐性の獲得により、エネルギー生産量が低下することが分かった。
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