本研究では、DNAの導電性発現のために必要な剛直な構造を、DNAと双頭型ヌクレオチド脂質分子の超分子ハイブリッド化によって構築し、その導電性能を評価することを目的とした。2021年度は、双頭型イノシン酸脂質集合体およびDNA/双頭型イノシン酸脂質超分子ハイブリッド構造を原子間力顕微鏡により詳細に構造解析し、さらに静電気力顕微鏡により導電性の可能性を検討した。 双頭型イノシン酸脂質集合体は、最小厚み3.5 nmの平板上構造を形成した。この厚みは、双頭型イノシン酸脂質分子の分子長に相当する。一方、DNA/双頭型イノシン酸脂質超分子ハイブリッド体は、厚み6 nmのナノシート構造を形成し、微分像ではナノシート表面に長さ150~300 nmのひも状構造が確認できた。このことから、DNA/双頭型イノシン酸脂質超分子ハイブリッド体は、イノシン酸脂質分子が平板状に集合しその上下にDNAが核酸塩基対形成しながらハイブリッド体を作っているものと推察できた。さらに、このハイブリッド体を3か月熟成すると、ファイバー構造が形成されることがわかった。このファイバーは高さ約6 nmであることから、ナノシートから構造変化したものと考えられる。また、このハイブリッドファイバーを静電気力顕微鏡で観察したところ、ファイバー部分のみが高いコントラストを与えた。DNAのみではほとんどコントラストのつかない像しか得られないことから、DNAと双頭型イノシン酸脂質をハイブリッド化することで導電性を有する構造体になったものと考えられた。
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