研究課題/領域番号 |
19K05184
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
稲垣 怜史 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (90367037)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | グラファイトドメイン / 配向制御 / 電気二重層キャパシタ / イオン液体 / 規則性メソポーラスカーボン / 金属触媒 |
研究実績の概要 |
本研究では,電気二重層キャパシタ(EDLC),とりわけイオン液体を電解液とする系の蓄電容量向上を実現する多孔質炭素材料の調製に取り組んでいる。イオン液体は粘度が高いのでミクロ孔のみからなる活性炭では,電解液の細孔内への浸透が十分ではなく,高速な充放電が達成しえない。一方,本研究で注目している規則性メソポーラスカーボンでは,ミクロ孔よりも広いメソ孔に電解液が浸透するので高速な充放電を達成しうることを明らかにしてきている。 当該年度ではポリアクリロニトリルを炭素源としても比表面積1340m2/gの含窒素規則性メソポーラスカーボンが調製可能であることを見出した。また本法で調製した含窒素炭素体をEDLCの電極とすると,7.6μF/cm2という高い充放電容量を高速充放電時にも達成できた。 ここでコバルトを炭素化時の触媒として加えた場合には,脱窒素はある程度進行してしまうものの多孔性炭素体を得ることができ,そのEDLC充放電容量は8.7μF/cm2という高い値が得られた。この値は前述の無触媒で調製した炭素体よりも高い値である。これはコバルト触媒によって炭素化が促進して電気伝導性が向上したことが一因と考えられる。実際に多孔性炭素体の電気伝導率は,10の一乗S/mオーダーから10の二乗S/mオーダーに向上していた。すなわち,コバルト触媒によりグラファイトドメインの形成が促進されたこと,またそのグラファイトドメインのエッジ面がメソ孔表面に露出する部位が増加したことが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の感染拡大の影響により,2020年4月から2020年9月まで研究を進めることがかなわなかった。2020年10月頃から研究環境が好転してきているので徐々に研究を進めているところである。 研究内容の進捗そのものは順調であるが上記の事情により半年間の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では,炭素源としてポリアクリロニトリルとする系で,含窒素規則性メソポーラスカーボンを調製し,炭素化過程での窒素成分の振る舞い,とりわけ触媒の有無による窒素の脱離過程を観測することで,窒素含有量を制御するための因子を明らかにしていく。 また本年度に実施できなかった検討を進める。具体的には,グラファイトのエッジ面が露出している場合には,エッジ面に水酸基などの官能基が存在していることが考えられるので,多孔質炭素体の水蒸気吸着等温線の測定を活用してその表面構造を調べることとする。特に吸着熱を精査することで水分子の吸着サイトの同定・識別について検討を進める予定である。
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