本研究では,電気二重層キャパシタ(EDLC),とりわけイオン液体を電解液とする系の蓄電容量向上を実現する多孔質炭素材料の調製に取り組んでいる。本研究で注目している規則性メソポーラスカーボンでは,ミクロ孔よりも広いメソ孔に電解液が浸透するので高速な充放電を達成しうることを明らかにした。 前年度ではポリアクリロニトリルを炭素源としても比表面積1340m2/gの含窒素規則性メソポーラスカーボンが調製可能であることを見出した。また本法で調製した含窒素炭素体をEDLCの電極とすると,7.6μF/cm2という高い充放電容量を高速充放電時にも達成できた。 最終年度の検討としてコバルトを炭素化時の触媒として加えた場合には,脱窒素が進行するものの多孔性炭素体を得ることができ,特に1000℃で炭素化した試料のEDLC充放電容量は9.0μF/cm2という高い値が得られた。ただしコバルトの担持量を0.1 mmol/g-SiO2から1.0 mmol/g-SiO2と増やしていくとEDLC容量が7.5μF/cm2まで低下した。過剰に担持されたコバルトはシンタリングが起こり,触媒能が十分に発揮されず,炭素化が促進されにくかったためと考えられ,0.1 mmol/g-SiO2程度が最適な触媒担持量であると結論できた。 最終年度では規則性メソポーラスカーボンの細孔表面に位置する官能基によって生じる物性の評価として水蒸気吸着等温線を測定・解析した。含酸素官能基をもつメソポーラスカーボンでは相対圧0.7付近で急激な吸着量の増加が見られるのに対して,含窒素官能基をもつ炭素体では相対圧0.6付近での吸着量の増加が見られた。すなわち,後者の試料が親水的であることがわかった。またCoを触媒とすると炭素化の過程で脱窒素が進行し,炭素体表面が疎水化することも確かめられた。
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