研究課題/領域番号 |
19K05186
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
大谷 政孝 高知工科大学, 環境理工学群, 准教授 (20585004)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 配位高分子 / 金属有機構造体 / ナノ結晶 / サイズ制御 / 外形制御 |
研究実績の概要 |
本申請課題では、「配位高分子(PCP)ナノ結晶の精密構造合成手法の開発」とそれにより得られた構造制御されたPCPナノ結晶の固有の物理的・化学的性質を系統的に検討し、「ナノサイズ・外形効果」を解明することを目指している。計画初年度では、PCPナノ結晶のサイズ・構造制御合成法の確立を目的とした。PCP結晶は金属イオンと有機配位子が交互に配位結合することでつくられる。そのため、結晶のサイズ・外形を制御する目的で、結晶核の生成・ 結晶成長速度の影響を精査した。とりわけ、反応速度に直接影響を与える因子として、反応溶媒、反応温度、架橋配位子の脱プロトン化(塩基効果)の3つについて着目し、系統的に合成条件を検討した。得られたPCP結晶は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察、X線回折(XRD)測定を用いて網羅的に分析した。その結果、反応時に用いる溶媒の極性や混合比率、反応温度等を適切に調整するだけで、同じ結晶構造・結晶外形を維持したままサイズを数10ナノメートルから1マイクロメートルの範囲で制御することに成功した。また、PCP結晶を形成する架橋配位子あるいは金属イオンに対して、競争的に作用する酸や分子を添加することで、結晶成長のより精密な制御が可能となり、結晶サイズ分布の標準偏差はおよそ10パーセント以下となった。一連の成果により、ナノサイズ化されたPCPナノ結晶を簡便に作り分けることが可能となり、次年度以降にサイズ・外形効果を検討するための有用な知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本計画の鍵となるサイズ・外形制御合成の基礎的知見を得る段階は、初年度の研究においてほぼ達成された。具体的には、溶液混合による簡便な室温合成法を確立し、10ナノメートル程度から10マイクロメートル程度までのサイズ制御を可能とした。また、計画当初に懸念された問題点についても、反応条件を最適化することで解決の見通しがついている。さらに、様々なサイズ・外形に制御されたPCPナノ結晶について、ガス吸着特性や熱分析法により基礎物性測定を行なった結果、研究開始当初に想定した以上の成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画の通り、作成した種々のサイズ・外形制御されたPCPナノ結晶について、種々の物性評価を行う。具体的な評価方法としては、粉体状態のサンプルの熱化学分析法と電子顕微鏡による微結晶状態のその場加熱観察を組み合わせた方法を用いる。はじめに示差熱分析(TG/DTA)・示差走査熱分析(DSC)などを用いた熱分析方法により、ナノ結晶化に伴う相転移温度、融点、ガラス転移点、分解点などの違いを明らかにする。さらに、DSCでの測定結果を元に、TEM を用いたその場加熱分析により、結晶サイズ・外形による結晶化・相転移現象を実時間スケールで観測することを目指す。また、サイズ制御されたPCPナノ結晶の本質的な物理的・化学的性質の違いを解明するため、ガス吸脱着測定や触媒反応を用いてサイズ・外形効果についても精査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の購入費用として計上していた物品費の一部が現有機器・試薬の利用により不要となったため。また、当初計画していた国内学会・研究会・国際学会等への参加を中止したため、旅費に未使用額が生じた。今後の使用計画としては、未使用額を含めて次年度の研究計画を迅速に遂行するために必要な物品・消耗品の購入費および学会発表の旅費として使用する。
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