研究課題/領域番号 |
19K05189
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
松木囿 裕之 九州大学, 先導物質化学研究所, 学術研究員 (50724150)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ポリアミン / ポリプロピレンイミン / ポリアミド |
研究実績の概要 |
2021年度は前年度に続き、ポリアミン骨格を有するポリマーの合成を行い、酒石酸やコハク酸などの代表的な有機ジカルボン酸との複合化を行った。 まずNs保護した1,3-ジアミノプロパンを2-(2-ブロモエチル)-1,3-ジオキソランと反応させた後、脱保護することで両末端をアルデヒド基で修飾された化合物を合成した。これをジアミンと反応させることでアゾメチン構造で連結したポリマーを合成し、還元することでポリアミンの合成を試みた。しかしながら得られた構造体は不溶性であり、アゾメチン構造を形成する際に副反応が進行し、部分的に三次元架橋体が形成してしまうことが原因と考えられた。 新たな手法として、ポリアミドからポリアミンを形成する合成ルートを検討した。1,3-ジアミノプロパンとアクリル酸メチルのマイケル付加を利用して両末端にCOOH基を有するBoc保護ジアミンを合成した。これを活性エステル化後、ジアミンと重合させることにより数平均分子量が10,000程度のポリアミドを合成した。そして脱保護によりポリアミン骨格を有するポリマーを合成することができた。その後、得られたポリマーを酒石酸やコハク酸などの有機酸と水中で混合したが、沈殿は形成せず、安定な複合体を得ることは出来なかった。 そこで得られたポリマー内のアミド部位をボラン還元することでプロピレンイミン骨格を有するポリアミンの合成を行い、NMRスペクトル測定により合成が確認された。この手法を用いることでより複雑な繰り返し構造を有するポリアミンを合成することが可能となる。そのためポリアミンが重要な役割を担うバイオシリカの形成過程や生体内でのDNAとの相互作用を理解するための研究を行う点で、今回の手法の開拓は有意義な成果であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
市販の短鎖のポリアミンから長鎖のポリアミンを合成する手法の開拓に多くの時間を必要とした。当初合成したNs保護ポリアミン(オリゴマー)の溶解性が悪く、重合が期待通りに進行しなかったため、計画していたポリウレタンやポリヒドロキシウレタン骨格のポリマーから構造を変更する必要が生じた。そのため当初の予定より進行が遅れてしまった。加えてアルデヒド末端とジアミン末端からアゾメチン構造を介してポリアミンを合成する経路も、副反応により不溶化してしまい、合成経路の再検討の必要性が生じたことも計画の遅れの要因となった。
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今後の研究の推進方策 |
今回合成したプロピレンイミンを用いて種々の有機ジカルボン酸との複合化を試みる。また最初の原料を1,3-ジアミノプロパンから1,2-ジアミノエタンや1,4-ジアミノブタンなどに変更し、より複雑なポリアミンの合成を行う。そして得られたポリアミンと有機酸から安定な超分子複合体の構築が行える組み合わせを調べる。 別途、市販のポリオキサゾリンからポリエチレンイミンンを合成し、これを酒石酸と複合化後、シリカを作製し、これをテンプレートとしたトリアジン構造体の構築および分析も並行して行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していたポリアミンの合成法を変更したため、合成に時間がかかり、その後の依頼分析や測定に必要な費用が生じなかった。そのため、当初の予定よりも使用額が少なくなった。一方で、合成経路の開拓はほぼ完了したので、次年度では測定や分析およびデータの整理やまとめに研究費を充てる割合が多くなる。そのため次年度の使用額が当初の予定よりも多く必要になる予定である。
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