研究実績の概要 |
2023年度は2021-2022年度に続き、二級アミンを主鎖骨格に有するポリアミンの合成を行い、酒石酸やコハク酸などの代表的な有機ジカルボン酸との複合化を行った。 単純な構造のアミン化合物からポリアミドを介してポリアミンを形成する合成ルートを拡張する目的から、エチレンジアミン-N,N'-ジプロピオン酸、1,4-ジアミノブタン、N-(tert-ブトキシカルボニル)イミノ二酢酸を原料として用い、N-ヒドロキシコハク酸イミドによる活性エステル化後、エチレンジアミン、3,3'-ジアミノジプロピルアミン、1,4-ジアミノブタンと反応させることで二級アミンを主鎖に有するポリアミドを合成した。その後保護基の脱保護を行い、ボラン還元後、酸処理を行うことでエチレンイミン(en = CH2CH2NH)とプロピレンイミン(pn = CH2CH2CH2NH)部位が交互に配列した長鎖のポリアミンが合成できた。またen-en-pn-pn部位を1つのユニットとしたポリアミンも合成できた。さらにpn部位とテトラメチレンイミン(bn = CH2CH2CH2CH2NH)部位が交互に配列したポリマーを合成することができた。Boc保護後のGPC測定から、これらのポリアミンの分子量は17,000-24,000 g/molであり、およそ30-40量体の長鎖構造であると見積もられた。 これらのポリアミンは水に対する溶解性が異なっており、単純なenやpnのみを有するポリアミンと比較してpn-bn骨格のポリアミンはpH 7付近の溶解性が高く、en-en-pn-pn部位のポリアミンはpH 10以上の塩基条件下でも沈殿しなかった。また種々の有機ジカルボン酸と混合したが、結果的にen骨格のポリアミン以外では酸性~中性条件下では沈殿を生じず、安定な複合体は構築しなかった。
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