研究課題
表面増強ラマン散乱は、微弱なラマン散乱光を増強し測定感度を上げる方法として注目されている。局在表面プラズモン電場による貴金属クラスター近傍での増強は、2つの隣接するクラスター間隙において更に増強されることも知られている。我々は、この電場増強が可能なクラスター-クラスター構造を、ひとつの微粒子上に構成することで電場増強用のプローブの開発を試みた。テンプレートとして規則性の高いポリスチレン粒子(PS粒子)のコロイド結晶を用い、これに電解めっきによって銀クラスターを析出させることで、PS 粒子表面に電場増強が可能な構造を作成しラマン増強プローブとしての利用可能性を評価した。200nm径のポリスチレン粒子表面に銀クラスターを析出させてこれを試料とした。電子顕微今日観察の結果、適切な条件においてはポリスチレン粒子表面もしくはその間隙に、10~50nm程度の銀クラスターが析出していることを確認した。単一の銀クラスターギャップにおける増強を観測するため、3 回めっきした試料中から、FIB 加工によって銀クラスターをその周囲のPS 粒子ごと切り出したものをプローブとして使用した。ビピリジン水溶液中において顕微ラマンによって測定した結果、銀クラスターギャップ近傍において極めて強力な増強効果が観測され、水溶液中では観測不可能なビピリジン由来のラマンピークを検出できた。これらの結果から、実用に供するためのラマン増強プローブを実現した。