研究課題/領域番号 |
19K05201
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
植田 暁子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (70453537)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 遷移金属ダイカルコゲナイド / デバイスシミュレーション / スピン・フォノン相互作用 |
研究実績の概要 |
遷移金属ダイカルコゲナイド単層膜において、スピンとフォノンの自由度の相関がその特性に与える影響を理論的に研究している。今年度は以下のような研究を行なった。 (1)遷移金属ダイカルコゲナイドのデバイスシミュレータの開発:遷移金属ダイカルコゲナイドトランジスタの特性を解析するために、ドリフト拡散法とポアソン方程式を用いたデバイスシミュレータを開発した。このシミュレータでは、電流特性の他、キャリア分布、バンド形状などを導出することができる。現在、ショットキーゲートトランジスタの解析を行うため、非平衡グリーン関数法を用いたシミュレータを開発中である。 (2)イオン液体ゲートWSe2トランジスタの特性解析:開発したシミュレータを用いてイオン液体ゲートWSe2トランジスタの電気伝導特性を解析した。バンド形状の解析により、WSe2と金属電極の界面でのショットキー障壁の形状の急峻な変化がイオン液体による電界によって引き起こされ、両極性を生じることを明らかにした。この成果をnpj computational materialsに掲載した。 (3)MoS2のg値の温度変化の理論的説明:MoS2のg値の温度変化を説明するために、Mori-Kawasaki formulaを用いてスピン帯磁率を計算している。スピン軌道相互作用として、Elliot-Yaffet (EY)相互作用とD’yakonov-Perel’ (DP) 相互作用を取り入れた。また、電子格子相互作用を取り入れ、スピン・フォノン相互作用によって、実験でのg値の低温での温度変化が説明できることを明らかにした。現在、研究成果を論文に纏めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有用なデバイスシミュレータの開発に成功しており、遷移金属ダイコルコゲナイドのデバイス特性解析を順調に行なっている。2019年度はイオン液体ゲートを用いた遷移金属ダイカルコゲナイドトランジスタについてその特性を解析し、その研究成果を論文に掲載することができた。現在、スピン・フォノン相互作用がスピン帯磁率に与える影響などを理論的に解明しており、スピン・フォノン操作を用いたデバイスを提案するための新たな知見を得ることができている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、非平衡グリーン関数法とタイトバインディングモデルを用いた遷移金属ダイカルコゲナイドのシミュレータの開発を進めている。このシミュレータにスピン軌道相互作用と電子格子相互作用を取り入れることにより、スピン・フォノン相関が電気伝導特性、磁気特性、熱特性に与える影響を考察していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
7月よりコロンビア大学に約1年間の長期出張を行なったため、科研費の利用が困難になった。2020年度は日本に戻り研究を行うため、延期していた大規模計算機の購入を行う予定である。
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