本研究では,筆者が新規に提案するカーボンナノチューブ紡糸法である「CNT放電紡績法」の開発を行い,これにより従来は繊維作製が困難であった単層CNT や強磁性金属内包CNTなど優れた機能性を有するCNTの紡績が容易に実施できるようにすることをめざして研究を行った。 2021年度は,前年度に確認した「4電極構造」による多層CNT撚糸作製の再現性確認を行い,CNT撚糸作製可能な条件を確定した。作製したCNT撚糸を実際に装置外に取り出し,簡易的にその強度などの諸特性を調べ,ピンセットなどで扱うことが十分可能な撚糸であることを確認した。現状ではまだ,撚糸にするための撚り強度が十分ではないため,今後,これを改善し,CNT撚糸の機械強度特性や電気伝導特性などの本格的な特性評価を行う予定である。本方法による紡糸は,長さ50 μm以下の短尺なCNTでも実施可能であることを示す成果も得られた。さらに多層CNTのみならず単層CNTでも実施可能であることを示す結果も得られた。 一方,これまで目指してきた,鉄内包CNTによる撚糸作製については,前年度に通常の多層CNTとブレンドして用いる方法を検討してきたが,鉄内包CNTの含有量が少なくなり,結果として鉄内包CNTの特徴である強磁性が十分に発揮できなくなることが明らかとなり,鉄内包CNTに放電紡績法を適用することは困難と判断した。そのため,静電紡糸法による撚糸作製の検討を行った。その結果,鉄内包CNT由来の強磁性を明瞭に示す鉄内包CNT含有ポリマー繊維を作成することに成功した。また,この繊維の捕集方法を検討することで,配向性を有する集合体の形成に成功し,配向性を有したFe@CNT紡織布の作製が可能であることが示された。
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