研究課題/領域番号 |
19K05207
|
研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
成瀬 延康 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (30350408)
|
研究分担者 |
田口 弘康 滋賀医科大学, 神経難病研究センター, 特任教授 (90102912)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | アミロイドβ / オリゴマー / 走査型プローブ顕微鏡 / クルクミン誘導体 |
研究実績の概要 |
アミロイドβ(Aβ)が凝集した多量体(オリゴマー)は、神経細胞毒性をもつことから、アルツハイマー病(AD)に深く関連すると考えられ、その凝集・分解メカニズムが注目されている。しかし、オリゴマーの凝集力が高く、構造も多様に形成されて均一な結晶が作成し難いことなどから、回折法や分光法による構造評価が容易ではなく、Aβオリゴマーの構造は、十分に理解されているとは言えない。そこで本研究では、Aβオリゴマーを1nm以下の分解能で直接観察するための実空間顕微解析法を確立し、オリゴマーの具体的構造を明らかにすることが第一の目的である。この知見をもとに、近年開発されつつあるMRI用のAβイメージング有機物質(クルクミン誘導体)が、オリゴマーの構造に及ぼす影響を評価することで、オリゴマーの凝集・分解に寄与する因子の知見を得てAD薬剤開発への一助とすることが最終目的である。本年度は、バイオマテリアルの代表的な実空間ナノ構造評価手法である原子間力顕微鏡を用いて、作成したAβオリゴマーやフィブリルを観察するとともに、走査型トンネル顕微鏡(STM)においても分子レベルでの構造評価が可能であることを見出した。また、HOPG上に載せたAβオリゴマーの高さの正確な評価から、0.5nm毎の高さを有するオリゴマーが多数存在することを見出した。我々の作成した試料には、多種類のオリゴマーが存在することを電気泳動実験やSTM像のコントラストから確認するとともに、これらのオリゴマーはHOPG基板上でダイマーやトライマーの組み合わせからなるプロトフィブリルの構造に極めて近く、Aβフィブリルの一層分(~0.5nm)に相当することがわかった。以上より、オリゴマーは極めて容易にフィブリルへの成長が可能な構造となるものがあることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、Aβオリゴマーを1nm以下の分解能で直接観察するための実空間顕微解析法を確立し、オリゴマーの具体的構造を明らかにすることが第一の目的である。本年度は、この第一の目的を達成している。具体的には、バイオマテリアルの代表的な実空間ナノ構造評価手法である原子間力顕微鏡を用いて、作成したAβオリゴマーやフィブリルを観察するとともに、走査型トンネル顕微鏡(STM)においても分子レベルでの構造評価が可能であることを見出した。また、HOPG上に載せたAβオリゴマーの高さの正確な評価から、0.5nm毎の高さを有するオリゴマーが多数存在することを見出した。我々の作成した試料には、多種類のオリゴマーが存在することを電気泳動実験やSTM像のコントラストから確認するとともに、これらのオリゴマーはHOPG基板上でダイマーやトライマーの組み合わせからなるプロトフィブリルの構造に極めて近く、Aβフィブリルの一層分(~0.5nm)に相当することがわかった。以上より、オリゴマーは極めて容易にフィブリルへの成長が可能な構造となるものがあることがわかった。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の最終目的は、近年開発されつつあるMRI用のAβイメージング有機物質(クルクミン誘導体)が、オリゴマーの構造に及ぼす影響を評価することで、オリゴマーの凝集・分解に寄与する因子の知見を得てAD薬剤開発への一助とすることである。これにむけて、これまでに均一のAβの作成に成功したので、このAβ試料に対して、クルクミン誘導体を添加前後の構造変化を調査する。添加するクルクミンの誘導体には、ケト形、エノール形に変わりうるタイプとエノール形にしかならないものを作成する。これらの化合物が、どのような条件によりAβと結合するか、あるいは分解するかについて、有機化合物の条件を明確にし、AD薬剤開発に向けた知見を得て、治療法確立への一助とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響により、予定以上に旅費を使わなかった。また、走査トンネル顕微鏡の装置の不具合の修理を予定していたが、大学の研究室のある建物の改修工事により、来年度使用出来ない期間がある。装置は海外に送付しての修理となるため、2ヶ月以上使えなくなる。その時期にあわせて修理を行うために来年度使用額とした。よって移転後、直ぐに修理とする。
|