最終年度は、昨年度にTask 2にて実施した分子マスキング法-129Xe-NMR法を、新規作製したin-situ温度・圧力可変NMR測定システムを用いることで、分子マスキング-低温129Xe-NMR法へと拡張した。また、分子マスキング程度の制御法についても検討した。これらにより確立した拡張129Xe-NMR測定法を、原料や細孔発達度が異なる多様な炭素多孔体へ適用して、Task 3(あらゆる多孔体に適用可能な細孔形状評価法の確立)を実施した。また、Task 5として予定していた「ナノ制限空間の“形状”と束縛分子の電子分布との相関解明」を試みた。 本研究課題全体における成果として、 1)分子マスキング法との併用や温度・圧力可変システムの導入による、多孔体の細孔評価の一つとして用いられてきた129Xe-NMR法の適用性向上 2)これによる不規則複雑系多孔体の細孔形状評価法の提供 が挙げられる。 これまで不規則かつ複雑な細孔形状を有する多孔質材料について、細孔サイズのみならず細孔形状が機能発現に大きく影響することが理解されていたにも関わらず、その評価手法は限定的であった。本課題によって不規則複雑系多孔体の細孔形状評価法として拡張129Xe-NMR測定法の有効性が示されたことで、材料物性の一つである細孔形状情報に基づいた機能特性の解析が可能となる。これにより、高性能な材料開発へとつながるものと期待される。
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