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2019 年度 実施状況報告書

グラフェン透明電極を利用した電気化学発光免疫分析プラットフォームの構築

研究課題

研究課題/領域番号 19K05218
研究機関青山学院大学

研究代表者

渡辺 剛志  青山学院大学, 理工学部, 助教 (30803506)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード電気化学発光 / グラフェン / 電気化学発光イメージング / イムノアッセイ / POCT
研究実績の概要

2018年度までに単層グラフェン透明電極を用いて発光プローブであるルテニウムビピリジル錯体と共反応物トリプロピルアミン(TPrA)を含む溶液での電気化学発光(ECL)測定を行い、酸化インジウムスズ(ITO)電極と比較し、単層グラフェン電極がECL応用に適した特性を持つ透明電極であることが示唆されていた。
2019年度はECL分析応用に向けて、グラフェン電極に適した測定セルの検討として、ECL検出器の配置がECL強度に及ぼす影響について調べた。電極の裏側(基板背面)にECL検出器を配置すると集光角が増加し、表側に設置した時よりも数倍高いECL強度が観測され、透明電極を用いる利点が実証された。さらに単層グラフェンと透過率及び電気伝導性が異なる多層グラフェンでの結果を比較し、グラフェン電極の性質がECL特性に及ぼす影響について評価した。電極を透過したECLを測定しており、透過率の高い単層グラフェン電極が最も高いECL強度を示した。透過率の違いがECL強度にもたらす寄与を差し引いて比べても、単層グラフェン電極が最も高いECL強度を示し、単層グラフェンのもつ欠陥の少ない表面がECL分析に適することが示唆された。この表面構造の違いとECLの相関を調べるために、本基金により導入した光学顕微鏡を用いて、単層領域と多層領域を有する多層グラフェン電極のECLイメージングを行った。多層領域と単層領域で発光量の異なるECL像が得られたが、観察条件によって発光のコントラストの逆転が観測された。また単層グラフェンに共有結合性と非共有結合性の表面修飾を行い、表面修飾法が電気化学特性に及ぼす影響について調べた。その結果、単層グラフェン電極にジアゾニウム塩還元を用いた共有結合性の表面修飾を行うと電極反応が進行しにくくなることがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2019年度の研究計画として挙げた「ECL分析応用に向けたグラフェン透明電極の最適化」については、研究実績の概要の記載のとおり、透過率が高く欠陥の少ないグラフェン電極がECL分析に適することを明らかにした。またECL分析に透明電極を用いることの利点も実証できたことから、当初の計画通りに進んでいる。また2019~2020年度にかけての研究計画として挙げた「ECLイメージングによるECL特性及び分子修飾と局所構造の相関」についても、ECLイメージング環境整備を完了し、表面修飾法についての知見を増やしていることから、計画通りに進んでいる。2020年度にはECL分析応用に向けた分子修飾法を確立し、グラフェンの局所構造とECL特性及び分子修飾との相関を明らかにするための土台を作れたと考えている。

今後の研究の推進方策

2020年度は、グラフェン電極表面への発光プローブであるルテニウムビピリジル錯体の固定化を行い、ECLイメージングを利用してECL分析に適した修飾法やグラフェン電極の表面構造を明らかにする。
2019年度までに、単層グラフェンのもつ欠陥の少ないグラフェン電極が高いECL強度を示したことと、単層グラフェン電極に共有結合性修飾を行うと電極反応が進行しにくくなることがわかっている。これらの結果を踏まえ、単層グラフェンを2層以上積層した積層グラフェン電極でもRuビピリジル錯体の表面修飾を行う。2層以上にすることで共有結合性の表面修飾を最表層のグラフェンに行っても、下層のグラフェンの電気伝導性が損なわれないと考えられる。まずはRuビピリジル錯体が表面に固定化されたグラフェン電極でのECL観測を目指し、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)基を有するRuビピリジル錯体を合成する。グラフェン表面へのRuビピリジル錯体の固定化と並行して磁性ビーズにもRuビピリジル錯体を修飾する。グラフェン透明電極とこの磁性ビーズを用いてECL測定、ECL及び蛍光イメージングを行い、グラフェンのもつ消光特性がECLに及ぼす影響について調べる。グラフェン表面へのRuビピリジル錯体の固定化は、単層、多層、積層グラフェン電極を用いて、ピレン基とのπ-π相互作用やジアゾニウム塩還元による修飾法を行う。Ru錯体を修飾したグラフェン透明電極でECL測定及びECLイメージングを行い、ECL分析応用に最適な修飾方法を決定する。ECLイメージングにより得られたグラフェンの局所構造と分子修飾量やECL特性の相関について、結果をとりまとめて学会発表および論文発表を行う。

次年度使用額が生じた理由

大型物品の購入際し、端数が生じた。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Electrochemical Characterization of CVD-Grown Graphene for Designing Electrode/Biomolecule Interfaces2020

    • 著者名/発表者名
      Miki Keishu、Watanabe Takeshi、Koh Shinji
    • 雑誌名

      Crystals

      巻: 10 ページ: 241~241

    • DOI

      https://doi.org/10.3390/cryst10040241

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Reusability of Ir(111)/α-Al2O3(0001) substrates in graphene chemical vapor deposition growth2020

    • 著者名/発表者名
      Sakurai Atsushi、Niki Masaya、Watanabe Takeshi、Sawabe Atsuhito、Koh Shinji
    • 雑誌名

      Japanese Journal of Applied Physics

      巻: 59 ページ: SIID01~SIID01

    • DOI

      https://doi.org/10.35848/1347-4065/ab7f1a

    • 査読あり
  • [学会発表] Comparison between mono- and multi-layer CVD-grown graphene transparent electrodes for electrochemiluminescence applications2019

    • 著者名/発表者名
      Natsumi Hara, Takeshi Watanabe, Takamitsu Iwasaki, Shohei Kosuga and Shinji Koh
    • 学会等名
      32nd International Microprocesses and Nanotechnology Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] ECLイメージングを利用したグラフェン透明導電膜の局所分析2019

    • 著者名/発表者名
      岩﨑 貴充,渡辺 剛志, 原 菜摘, 黄 晋二
    • 学会等名
      第80回応用物理学会秋季学術講演会
  • [学会発表] CVDグラフェン透明電極における電極表面の性質と電気化学発光特性の相関2019

    • 著者名/発表者名
      原 菜摘,渡辺 剛志, 岩﨑 貴充, 小菅 祥平, 黄 晋二
    • 学会等名
      第80回応用物理学会秋季学術講演会

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公開日: 2021-01-27  

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