研究課題/領域番号 |
19K05222
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
内藤 泰久 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (10373408)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ナノギャップ / エレクトロマイグレーション / 金属 / 微細加工 |
研究実績の概要 |
本研究では、2つの電極が数nmで向かい合ったいわゆるナノギャップ電極について、電極金属の結晶構造の改善について探求をおこなっている。②「トンネル電流制御による結晶改善の検証」及び、研究項目③「単結晶ナノ電極の基板面方位依存性の検証」について進展があった。 ②については、結晶改善を担う電子風力によるナノギャップ変化に関して、これまで、真空もしくはガス中での電気計測が必要であったが、金属に対して共有結合をする結合基を有した有機分子で覆ったナノギャップでもトンネル電流による構造形成は有効であることを示した。さらに、導入した分子構造が電界もしくはトンネル電流を集中させるアンテナのような役割を果たし、有機分子単体の架橋状態をエレクトロマイグレーションを介して実現できることが分かった。この時有機分子のサイズは極めて小さい為、当初予定していた手法とは異なっているが、本研究における最終目標である点で向かい合ったナノギャップの形成に大いに近づいたと考えられる。本研究については、学会発表および論文にて成果を公表した。 ③については、前年度において実現したMgO基板上のPtナノギャップ電極の形成についてさらに探求を進めた。その中で出てきた問題として、MgO基板が水で変質するため光露光の工程が使えず、作製個数が限られているという問題があった。その為、描画時間の遅い電子ビーム露光でも沢山のナノ構造を作製できるように、構造を縁取りで形成し、イオンミリングにて縁取った構造を取り出す手法を考案した。その結果、電子ビーム露光による描画時間を100分の1程度に短縮する作製法を実現した。本研究については、学会発表にて対外報告を行った。 以上の様に研究は目標に向かって着実に進展している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は、基板表面の結晶性と電極金属の結晶性のマッチングを利用して、ナノギャップを構成する2つの電極間が点で向かい合うような電極を目指して研究開発を行っていた。その研究については、順調に継続しているが、それとは別に、トンネル電流もしくは電界が分子をアンテナとして集中させることで、構造変化を集中させ、有機分子の単体架橋構造を再現性良く達成できるようになった。有機分子のサイズはほぼ原子サイズなので、そのサイズでナノギャップの構造変化を集中させることができたと考えられる。また、これまで単一分子を電極間に架橋するためには、Mechanical Controlled Break Junction(MCBJ)法のような精密にナノギャップ間隔を制御できるようなアクチュエータを備えた駆動機構を必要としていた。この駆動機構は、実際の架橋サイズに比べれば巨大であり、将来の単一分子素子として応用は困難であった。その点今回の手法は、印可電圧のみであるため、微細化にも対応している。その為、単一分子で構成された電子素子の集積化に大いに貢献できる技術であり、今後の研究の広がりを大いに期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の③の研究の進捗により、MgO単結晶基板上の金属ナノワイヤー構造の作製が非常に高いスループットで実現できた。その為、次年度は基板の面方位とナノワイヤーの方向を様々組み合わせて、基板面方位に、結晶改善された金属ナノギャップ構造が影響を受けるのか精査し、構造再現性の高いナノギャップ形成を目指す予定である。また、有機分子と組み合わせた手法についても、原理的な部分で未解明点が多い為、その点も追及していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、コロナ禍の為研究の進捗が若干遅れ、予定していた外部への依頼分析費の執行が遅れることとなった。
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