本研究の目的は、SPoD-OnPAN超解像イメージングの利点である低光毒性・高生体適合性を維持しながら、蛍光強度の高次統計解析を伴う超解像イメージング手法を開発することである。このために、当該イメージング手法に適した光スイッチング蛍光タンパク質であるKohinoor 2.0の開発、そしてSPoD-OnSPANに蛍光強度揺らぎの高次統計解析を連動した超解像画像算出の検討を行ってきた。 本年度は、Kohinoor 2.0のpH依存性蛍光強度および光スイッチング速度の解析、そしてKohinoor 2.0で蛍光標識した細胞のSPoD-OnSPAN観察画像データによる超解像画像算出の検討を行った。Kohinoor 2.0のpH依存性蛍光強度解析により、励起状態の発色団フェノール基の解離pKaが2つの値に開裂することがわかった。これは、励起状態のKohinoor 2.0では、2つの異なるpH依存性コンフォメーションが平衡で存在することを示唆するものである。Kohinoor 2.0のpH依存性光スイッチング速度の解析からは、酸性条件に対して、アルカリ条件でのKohinoor 2.0で20倍速いOFFスイッチングを示すと推測された。これは、pH依存的なコンフォメーションが、Kohinoor 2.0の発色団周囲の構造の柔軟性に大きく影響することが示唆された。 さらに、蛍光標識した細胞の観察データによる超解像画像算出を検討した。Kohinoor 2.0標識アクチンを含む哺乳類細胞のタイムラプスSPoD-OnSPAN観察を行い、そこで得られた観察データより偶数次キュムラント画像を算出した。これにより、光の回折限界を超えた分解能の超解像画像を得られた。以上より、蛍光強度揺らぎの高次統計解析とSPoD-OnSPANによる超解像イメージングが可能になったことを確認した。
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