研究課題/領域番号 |
19K05231
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉田 慎哉 東北大学, 工学研究科, 特任准教授 (30509691)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 圧電MEMS / MEMSアクチュエータ / 圧電単結晶薄膜 / スパッタ成膜 / エピタキシャル成長 |
研究実績の概要 |
2019年度は,巨大圧電特性を有する材料として,Sm添加Pb(Mg1/3,Nb2/3)O3-PbTiO3(Sm-PMN-PT)単結晶を選び,Si基板上へのスパッタ成膜を試みた。 この材料の圧電特性を最大限引き出すには,以下の項目を達成する必要があると考えられる。①純ペロブスカイト相,②001配向,③最適組成,④高結晶品質である。 まずは,自由に組成を変更できる利点を有するパウダーターゲットを用いて,成膜条件を探索した。その結果,スパッタ成膜を間欠的に行うことで,純ペロブスカイト相をもつSm-PMN-PT単結晶薄膜を再現性よくエピタキシャル成長させることに成功した。また,得られた薄膜の組成を詳細に分析した。その結果,間欠スパッタは,膜中のPbの分布量を一定にする効果を持つことが実証された。さらに,シード層として(001)配向PbZrTiO3系薄膜を用いることで,その上に堆積させたSm-PMN-PTの001配向を強く促すことも見出した。これらの成果は,国内学会にて報告した。 次に,Sm添加量を調整することで,圧電特性が最も大きくなる組成の探索を行った。まず,上記のスパッタ堆積法を用いて,様々な組成のSm-PMN-PT単結晶薄膜をSi基板上に形成した。次に,その基板をダイシングによって短冊状に切り出し,片末端を固定して片持ち梁を形成した。そして,駆動電圧を印可した際の変位を測定し,薄膜の圧電定数を測定した。その結果,2019年度においては,商業化されているPZT多結晶薄膜と同程度の圧電特性を得ることができた。 2020年度では,さらに最適組成の探索を行い,また,結晶品質の向上を行うための手法を開発していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数多くの成膜を繰り返し行うことで,選定した材料であるSm-PMN-PTの特性や癖がわかってきた。高品質の単結晶薄膜を得るための成膜条件や層構造について,知見が着実に積まれてきており,研究進捗は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度では,引き続き最適組成の探索を行っていく。また,結晶品質を向上させ,圧電性能をさらに上昇させることを試みる。もし期待通りの性能が出なかった場合,その原因を材料科学的分析法で明らかにし,解決法を見出す。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定よりも早く,良好な成膜条件を見出すことができた。これにより,実験での試行錯誤の回数が減り,結果として物品の消耗が少なかった。また,予定していた国際・国内会議での発表が,新型肺炎の影響で中止となってしまった。ゆえに次年度使用額が生じた。 使用しているスパッタ成膜装置のメンテナンス等に使用する予定である。
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