研究課題
圧電性と耐熱性とのバランスがよいチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いた圧電MEMS(微小電気機械システム)アクチュエータは,既に産業的な成功をおさめている。しかし,PZTの性能の向上化は限界に達しつつあり,デバイス性能もこれにより制限されている。本研究では,申請者の見出した「強誘電体単結晶薄膜のキュリー点変調技術」を用いて,極めて大きな圧電性能を有しているにもかかわらず,低キュリー点ゆえに実用性に乏しい強誘電体薄膜のキュリー点を引き上げる。これにより,巨大な圧電特性と高耐熱性とを両立する革新的な圧電薄膜をSi基板上に形成することを試みる。そして,超高性能圧電MEMSアクチュエータの実現可能性を実証する。前年度、Sm添加マグネシウムニオブ酸鉛・チタン酸鉛(Sm-PMN-PT)単結晶膜のスパッタ成膜を試みた。そして、その圧電性能|e31,f|は20C/m^2に達し、既存の最高性能のPZTとほぼ同等であることを実証した。2021年度は、この膜の圧電性能のさらなる向上を目指した。具体的には、バッファ層構成を最適化し、Sm-PMN-PT薄膜に、駆動電圧が損失なく効率的に印可されるような工夫を施した。しかしながら、研究期間内において、上記の圧電性能を超える膜は得られなかった。本材料のバルク単結晶の圧電性能を考慮すれば、薄膜としての性能はもっと高くなってもよい。今後、組成最適化や分極処理を行うなどして、本材料のポテンシャルを発揮させることを試みる。また、600℃以上まで加熱し、誘電率の温度に対する依存性を測定する装置、すなわちキュリー点測定装置の開発にも成功した。さらに、上記の単結晶薄膜の弱点である機械的脆性に対する解決法の一つとして、多結晶膜によって単結晶膜を区画化するという手法を探索した。結果、バッファ層をパターニングすることで、この区画化のボトムアップ形成を達成した。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
IEEE Transactions on Ultrasonics, Ferroelectrics, and Frequency Control.
巻: - ページ: -
10.1109/TUFFC.2022.3156881