研究課題/領域番号 |
19K05237
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
金澤 周介 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (60783925)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 印刷 / 光触媒 / 界面破壊 / 界面制御 / 3D / MEMS |
研究実績の概要 |
本研究では光触媒作用による界面破壊をデバイス製造プロセスに応用するための基盤研究を行っている。光触媒層上に印刷形成した機能膜の付着力を大幅に低下させ、その剥離容易性を利用した立体構造の転写形成技術を確立し、中空構造を有する機械的デバイスの創出へとつなげる。 実施2年目となる2020年度には、初年度に確立した付着力スイッチング効果の繰り返し再現性の評価、面内均一性の評価を行い、光触媒層の膜厚均一性を向上させることでそれらを改善した。また、付着力スイッチングの高速化を検討し、本研究で用いている塗布型スラリー由来の光触媒層においては20ミクロン前後の厚めの層を形成することが高速化につながることを見出した。光吸収による基板の温度上昇が界面破壊の触媒作用を促進していると考察される。また、短波長を含む真空紫外光を光源に用いることも高速化に有効であることを確認した。また、付着力スイッチングを行った後の転写膜の剥離角度と、剥離速度及び膜断裂について詳細に検討し、高速化に最適な剥離角度を基板水平面に対して20~40°と規定した。これにより目指す転写プロセスを実行するための機械装置を具体的に設計することが可能な状態となった。これら一連の成果を集約することで、付着力スイッチング処理を経由して転写プロセスを行う処理時間は研究開始当初の30分から数分オーダーへと短縮することが可能となった。現象を扱う研究段階から、産業応用可能な技術へと研究フェーズを押し上げている。 上述の研究進捗に基き、学会発表3件、特許出願1件の成果を得ている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
光触媒を用いた転写プロセスは初年度の基礎プロセスの確立、2年目の均一化、高速化と当初計画通りの進捗を得ている。加えて本研究で得られた界面破壊に関する知見を応用して、電子回路を非破壊に立体成形する新技術の確立へとつなげた。研究成果を周辺技術へと波及させながら進められており、当初計画以上の進展が得られているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度となる2021年度には、本研究の成果を広く直感的に発信できる成果物を生み出すことを目標とする。具体的には、開発した転写プロセスを用いた新規センサデバイスを創出し、その動作を利用したデモンストレーションまで完成させることで、学術論文、学会のみならず技術展示会等の産業的視点に対しても訴求力のある研究成果の発信を目指す。本研究で扱う低温デバイス製造、有機材料の特長を生かすために、薄く柔軟なフレキシブルデバイスまたはウェアラブルデバイス等の設計と試作を進める。また転写プロセスの最適化を進め、当該デバイス作製に適用する。学術的成果と産業的価値の両面に寄与する明確な成果発信とともに本研究を締めくくる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の拡大により、実施者が勤務する産業技術総合研究所柏センターにも出勤制限がかかった。その影響で実験の実施回数を当初計画より減らさざるを得ず、消耗品費と委託分析費に充当する分の予算が余剰となった。実験計画を変更し、詳細な評価を中心に研究進捗を得ることができた。 今年度も引き続き余談を許さない状況ではあるが、最終年度のまとめとしての成果発信を強化するために繰り越し分を充当する。具体的にはデバイス試作の設計費用ならびに作製に掛かる役務調達を計画している。対面での学会等も引き続き難しい状況であるが、Webでも成果を十分に伝えられる明確なデモを作り、本研究を締めくくる計画である。
|