本研究では光触媒作用による界面破壊をデバイス製造プロセスに応用するための基盤研究を行っている。光触媒層上に印刷形成した機能膜の付着力を大幅に低下させ、その剥離容易性を利用した立体構造の転写形成技術を確立し、中空構造を有する機械的デバイスの創出へとつなげる。 実施最終年度となる2021年度には、初年度と次年度を経て確立した付着力スイッチング効果を用いた印刷技術の開発に主眼を置いた。150mm四方の寸法の光触媒基板の全域に転写前のプレ構造を形成し、それを転写先の基板に対して立体的に転写する手法の確立に取り組み、樹脂レジスト、銀ペースト、銅ペーストなどの複数の材料に適用するに至った。片持ち梁(カンチレバー)や両持ち梁(ダイヤフラム)などの機械構造を、転写によってアディティブに作製することの実現に至った。上記プロセスを確立する上で、短時間で付着力スイッチングを行う高スループット化が重要であった。本研究開始時には1時間程度の紫外線照射が必要であったが、光触媒とプレ構造の界面にフッ素系の離型剤を形成することが高スループット化に有効であり、最短で5分までの時間短縮に成功しており、実用性の面でも大幅な改善が得られた。本研究開始時のプロセス面での目標は全て達成されたと評価できる。光触媒による界面破壊のメカニズム解明については、ラジカルが主に高分子鎖内の二重結合にアタックしていることが、材料のスクリーニングの中で示されたが、ポリスチレンやポリアニリンなどの環状化合物を高分子鎖中に有する材料同士の比較においては未だ不明瞭な点も多い。成膜された時の平坦性も関わることが示唆されており、明確なモデル形成にはさらなる研究が必要であると考えられる。 上述の研究進捗に基き、学会発表3件、IF付論文1件、特許出願2件の成果を得ており、学術、産業の両面において成果を輩出することができた。
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