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2019 年度 実施状況報告書

金属含有磁性炭素シートのナノアーキテクトに関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K05245
研究機関埼玉大学

研究代表者

本多 善太郎  埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (30332563)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード磁性材料 / 炭素材料 / 2次元物質
研究実績の概要

金属が原子レベルで炭素シート中に均一分散した磁性炭素シートは炭素シートの優れた電子物性にスピン源が加わった材料であることから次世代スピントロニクス材料として有望視されている。しかしその多くはバンド計算におけるモデル化合物にとどまり、物質合成に至った例は少ない。一方、化学の分野では磁性炭素シートと類似した金属有機構造体をナノアーキテクトにより合成する手法が確立されている。そこで本研究ではこれらの分野を相補的に融合し、有機分子をビルディングブロックとしたナノアーキテクト的手法によりスピン源が均一分散した炭素シートの合成法を確立することを目指している。本年度は1.ビルディングブロックに平面有機分子であるメラミン誘導体及び桂皮酸、カップリング材に磁性金属を用いた磁性2次元窒化炭素シートの合成、及び2.平面金属錯体である金属フタロシアニン誘導体をビルディングブロックに用いた磁性2次元窒化炭素シート合成の2方法の検討を行った。方法1では特定の反応条件下で、24原子空孔を有する窒化炭素シートが生成することを明らかにした。24原子空孔には機能性(イオン吸着能)があり、汚染物質除去や磁性材料等への展開が期待される。また、桂皮酸をビルディングブロックに用いた場合、反応条件により1次元及び2次元構造の有機無機複合物質が得られた。磁性を調査したところ、一部の化合物が強磁性、フェリ磁性を示すことを明らかにした。方法2では特定の反応条件でフタロシアニンシートの空孔内に金属が挿入された磁性窒化炭素材料が得られることを明らかにした。磁性を示すフタロシアニンシートにさらに磁性イオンを吸蔵させることで、磁性イオン濃度の向上を達成し、本研究により窒化炭素シート中の磁性イオン濃度向上の指針を得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度はスピン源が均一分散した炭素シートの合成法を確立することを目的として、平面金属錯体及び有機分子をビルディングブロックとした一連の磁性炭素シートの合成を検証した。
1.有機ビルディングブロックにシアヌル酸クロリド、メラミンを用い、金属粉と真空加熱したところ、空孔を有する2次元窒化炭素シートが形成することを見出した。反応条件を検討し、最適合成条件を見出した。また、本方法で得られた窒化炭素シートの構造を粉末X線回折法とモデルシミュレーションから推定し、ポリトリアジンイミド構造であることを明らかにした。さらに合成した窒化炭素シートを酸やアルカリで処理したところ、アルカリ条件下では磁性金属イオンを、酸性条件下では硝酸イオン等を吸着することも明らかにした。さらに、ビルディングブロックに桂皮酸を用いた場合、1次元及び2次元構造の有機無機複合物質が得られた。磁性を調査したところ、一部の化合物が強磁性、フェリ磁性を示すことを明らかにした。
2.平面金属錯体であるフタロシアニン誘導体をビルディングブロックとして、フタロシアニンが2次元状に伸展したフタロシアニンシートの合成を検証した。その結果、金属塩を過剰にした条件でフタロシアニン誘導体と金属塩を真空加熱するとフタロシアニンシートの空孔に金属が挿入された磁性窒化炭素物質が得られることを明らかにした。また、その磁性を調査したところ、極低温で強磁性を示すことが分かった。今年度の研究により窒化炭素シート中の磁性イオン濃度を向上する方策の指針を得た。

今後の研究の推進方策

前年度の研究成果を受けて2020年度は以下の通り研究を推進する。
1.ビルディングブロックに平面有機分子を用いた磁性炭素材料の探索と合成。シアノベンゼンやクロロベンゼンなど平面分子であるベンゼン誘導体をビルディングブロック、金属をカップリング材として金属が均一分散した2次元炭素及び窒化炭素物質の探索を行う。今年度は特にシアノベンゼン誘導体の環化反応を利用した2次元窒化炭素形成を検証する。原料混合比、反応温度、時間等の反応条件の最適化を行い、2次元窒化炭素の新規方法を確立する。また、合成した2次元窒化炭素への金属導入を行い磁気測定により磁気特性を調査し、磁性材料への適用の可能性を検討する。さらに強磁性及びフェリ磁性を示した桂皮酸有機無機複合物質の磁性及び構造に関する調査を進める。2.ビルディングブロックに平面金属錯体を用いた磁性炭素材料の探索と合成。金属フタロシアニンシート空孔への金属導入と磁性増強の検証を行う。比較的合成結果が良好であった銅及びコバルトフタロシアニンシートを合成し、ソルボサーマル法等、各種方法によりフタロシアニンシート空孔への金属イオンの導入を試みる。光電子分光法、X線回折法により金属イオンのシート内配置、周辺環境を同定し、磁気測定により、金属導入条件と磁化値の関係を調査、磁性増強の指針を得ることを目指す。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Preparation and magnetic properties of Mn-doped porous carbon nitride sheets2019

    • 著者名/発表者名
      Honda Zentaro、Saito Masato、Takenaka Fumito、Kamata Norihiko、Sawada Yuya、Kida Takanori、Hagiwara Masayuki
    • 雑誌名

      Solid State Sciences

      巻: 98 ページ: 106017~106017

    • DOI

      10.1016/j.solidstatesciences.2019.106017

    • 査読あり
  • [学会発表] 金属をドープした窒化炭素シートの合成と磁性2019

    • 著者名/発表者名
      竹中 文人、斉藤 優斗、澤田 祐也、木田 孝則、萩原 政幸、鎌田 憲彦、本多 善太郎
    • 学会等名
      第80回応用物理学会秋季講演会
  • [学会発表] 細孔構造スクアリン酸金属錯体の磁性2019

    • 著者名/発表者名
      宮古雅大,野本尚之,藤原隆司,澤田祐也,木田孝則,萩原政幸,鎌田憲彦,本多善太郎
    • 学会等名
      第43回日本磁気学会学術講演会
  • [学会発表] 一次元金属錯体M(sba)(H2O)2・H2O(M=Co、Cu) の磁気異方性2019

    • 著者名/発表者名
      野本尚之,藤原隆司,澤田祐也,木田孝則,萩原政幸,鎌田憲彦,本多善太郎
    • 学会等名
      第43回日本磁気学会学術講演会
  • [学会発表] 蜂の巣格子反強磁性体Cu2(pymca)3(ClO4)の超強磁場磁化過程2019

    • 著者名/発表者名
      萩原政幸, 松田康弘, 奥谷顕, 木田孝則, 鳴海康雄, 金道浩一, 本多善太郎, 下川統久朗
    • 学会等名
      日本物理学会2019年秋季大会

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公開日: 2021-01-27  

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