研究課題
炭素材料はその多様性、優れた電子物性からエレクトロニクス材料として有望視されている。しかしながらその多くは不対電子が存在しないため非磁性である。そこで本研究では有機分子や錯体をビルディングブロックとしたナノアーキテクト的手法によりスピン源が均一分散した磁性炭素シートの合成法を確立することを目指している。昨年度に引き続き1.ビルディングブロックに平面金属錯体を用いた磁性炭素シート及び2.ビルディングブロックに平面有機分子を用いた磁性炭素シートの探索と合成を行った。また、3.では2の研究過程で偶然得られた有機層と無機層が無限積層した有機無機複合磁性体に関する研究も行った。1では塩素化フタロシアニンと各種金属粉を高温で加熱することにより、鉄、コバルト原子が均一分散した多孔質磁性炭素を合成し、その構造と生成条件を明らかにした。また、その多孔構造に起因する機能を検証する目的でリチウム金属電池を作成し、電池材料への適用可能性があることを充放電特性より明らかにした。2では各種平面有機分子をビルディングブロックに選定し、金属塩との反応を試みた。テトラシアノベンゼンとコバルト塩の反応ではコバルトが均一分散したシート状2次元炭素が生成することを明らかにした。一方、テトラシアノベンゼンとジアミノピリジンをビルディングブロックに用いた場合、1次元構造の磁性炭素の生成の可能性が示された。これら一連の磁性炭素材料の磁気・電気特性を調査したところ、いずれも常磁性・絶縁体であることを明らかにした。3では有機ビルディングブロックに各種桂皮酸誘導体を用い、コバルト塩、銅塩と反応させ有機層と無機層が無限積層した各種有機無機複合物質を合成し、その反応生成条件を明らかにした。各種有機無機複合物質の磁性は無機層に銅を含む場合強磁性、コバルトを含む場合保磁力が大きいフェリ磁性であった。
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Solid State Sciences
巻: 123 ページ: 106793~106793
10.1016/j.solidstatesciences.2021.106793