研究課題/領域番号 |
19K05247
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
石川 謙 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (10176159)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 強誘液晶液晶 / 非線形光学 / 誘電率 / フラストレーション |
研究実績の概要 |
MC451-MC881混合系に関しては、電場印可後の緩和過程を前年に引き続き、誘電率測定と、光第2高調波(SHG)測定による測定を行うとともに、新たに電場印可後の旋光能(ORP)測定を行っている。混合系液晶は層構造を有し、分子長軸が層法線方向から一定の角度傾いたSmC液晶であるが、不斉炭素を含むために、傾き方向が層ごとにわずかに回転してらせん構造を形成している。これまでに研究により電場印可直後には、分子の傾き方向が隣接層間でほぼ同じ方向である強誘電状態になっており、その後の緩和過程を通して最終的に分子が2層ごとに、ほぼ反対方向に傾く4層周期構造の反強誘電状態へと移行していくと考えられている。そして、電場印可直後の強誘電状態と、最終的な反強誘電状態では、らせんの掌性が反転することが知られており、掌性の反転によりORPの符号も反転するのでORP測定を通して緩和過程に関する新たな知見が得られることが期待される。これまでの測定を通して、電場印可直後と、その後でらせんの掌性が反転することは確認取れており、より詳細な解析を行っている。 前年までのMC452-MC881混合系に加えて、MC881-MC815系混合系における無閾反強誘電状態の測定を開始した。MC881ーMC815系は無閾反強誘電性液晶ディスプレイ材料として期待され、プロトタイプディスプレイの作製にも使用されていたとされる材料であるが、製品開発を目指した研究開発しか行われていなかったため基礎的な知見は公開されないまま失われているため、様々な混合割合の資料について電場誘起複屈折の温度および電場依存性の測定により相図の作製を行っている。測定結果の一部については、2022年度の日本液晶学会討論会において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
MC451-MC881混合系に関して、当初予定していた誘電測定では、測定のために試料に電場を印可する必要があり、測定電場強度と緩和過程の検討などに手間取っているため、進捗が遅れている。これに対して、測定時に電場を印可しないSHG測定においては、一通りの測定が終了して、論文投稿中である。また、ORP測定に関しても、測定時に電場印可の必要がなく、測定は比較的スムーズに行え順調に推移している。しかしながら、ORP測定において、濃度差が2%程度の狭い濃度範囲の試料の中で、MC881の濃度比が一番高い物だけが、ほかの試料と全く異なる緩和挙動を示すことが新たに観察され、混合濃度範囲を広げての測定が必要となっている。 MC881-MC815混合系については、いくつかの混合濃度に関して、温度を横軸、電場を縦軸にした電場誘起複屈折の計測が終了しているが、電場誘起複屈折測定は1試料について、1週間程度以上の時間が必要で効率が悪いために、ORP測定に軸足を移して、より短期間での濃度相図の作成を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの誘電率、SHG測定に加えて、ORP測定が緩和過程の評価に有効な測定手法であることが確認できたため、ORP測定を一つの軸に、緩和過程の検討を行う。MC451-MC881混合系に関しては、ORP測定により新たに見いだされた微少濃度差での、緩和過程の大きな違いについて、MC881がより高濃度の領域も含めて検討を行い、系のどのような違いが緩和挙動の違いをもたらしたのかを明らかにする。 MC881-MC815混合系に関しては、無閾反強誘電応答を示す混合割合近傍での正確な相図の作成を行うために、測定の効率化が必要となるので、従来の電場誘起複屈折ではなく、ORP測定により0電場での相図を効率的に作成し、それを元に電場印可による緩和過程測定を行う濃度域の決定をして、測定の迅速化を図る。
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