研究実績の概要 |
今年度は, NbBiX3(X:S,Se)ミスフィット層状化合物の単結晶をフラックス法によって育成することに成功し, この単結晶育成法について論文を投稿し, 現在査読待ちの状態である. 本手法による単結晶育成を進める過程で, NbBiSe3中のNbSe2相が2層存在するNb2BiSe5相が結晶中にintergrowthすることがあきらかとなった. 現在, Nb2BiSe5単相の単結晶の育成条件の探索を新たに進めている. これを推進するため, 今年度, 前倒し請求を行った. また, 当初の研究計画である別のミスフィット層状化合物の単結晶育成としてNbBiX3(X:S,Se)に類似したNbSnX3(X:S,Se)についても単結晶育成を進めている. 走査トンネル分光法に関する研究では, 育成したNbBiSe3単結晶について低温におけるトンネル分光の実験を行い, 現在データの解析を進めている. また, より汎用性が高く実験を遂行する上で扱いやすい試料ホルダーおよび測定系の構築も進めている. 来年度以降は, 同じ物質系で積層構造(ミスフィット構造)の異なるNb2BiSe5相の単結晶育成を試みるとともに, 当初の計画のNbSnX3(X:S,Se)単結晶の育成を行う. そして, これら単結晶に共通のNbX2層を有するミスフィット層状化合物における物性について, 新たに構築している走査トンネル分光の測定系を用いてあきらかにしたいと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単結晶育成については, NbBiX3(X:S,Se)単結晶の新しい育成法を論文に投稿するところまで進めることができたとともに, 当初の計画とは別にNb2BiSe5相という新たな単結晶育成に関する研究に着手することができた. 走査トンネル分光法については, 実験を行うことができ, 順調であるが, 新たな測定系の構築がやや遅れ気味であることから, 本研究計画としては, 「(2)おおむね順調に進展している」とした.
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今後の研究の推進方策 |
単結晶育成については, 研究計画にあるAMX3の単結晶育成を進めるとともに, Nb2BiSe5相のようなAX2相が複数存在する単結晶の育成にも注力したいと考えている. また, 走査トンネル分光法の新たな測定系を作製することで, 物性評価をより効率的に進められるような実験環境を構築したいと考えている.
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