研究課題/領域番号 |
19K05251
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
広光 一郎 島根大学, 学術研究院理工学系, 教授 (40199138)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 有機薄膜太陽電池 / 動作原理 / 内部電場 / 電場変調分光法 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、まずポンプ-プローブ型電場変調分光(EAPP)の装置の立ち上げを行った。自作の電場変調分光装置を改造することにより、レーザーからのポンプ光を測定試料に照射した状態で弱い単色光(プローブ光)を用いて電場変調吸収信号を検出できるようにした。 こうして作製したEAPP装置を用いて次の2種類のヘテロ接合型有機薄膜太陽電池のEAPP測定を行った。①GZO/C60/亜鉛フタロシアニン(ZnPc)/Au、②Au/ZnPc/ペリレン誘導体(Me-PTC)/In/Al。ここでZnPcはドナー(p型半導体)、C60及びMe-PTCはアクセプター(n型半導体)であり、①も②もドナー層とアクセプター層を接合させたヘテロ接合構造となっている。 ①のEAPP測定を行ったところ、C60層の内部電場はC60とZnPcのどちらの光励起(ポンプ)によっても著しく変化した。C60を光励起した場合、C60の内部電場は-2 V~+2 Vの広いバイアス電圧領域で減少した。一方、ZnPcを光励起した場合には、バイアス電圧が0 V付近でC60の内部電場が増大した。しかし、ZnPc層の内部電場は、電場変調吸収信号が非常に弱いため感度が悪く、測定できなかった。 ②でもMe-PTC層の内部電場はMe-PTCの光励起により著しく変化し、-1 V~+2 Vのバイアス電圧領域で電場の向きが逆転した。一方、ZnPcの光励起ではMe-PTC層の内部電場は変化しなかった。ここでもZnPc層の内部電場は感度が悪く測定できなかった。 このように、EAPP測定によりドナーあるいはアクセプターの選択的光励起による内部電場への影響を測定可能であることが立証された。しかし、研究をさらに進めるためにはドナー層の内部電場測定が不可欠であり、それを実現することが新たな課題として浮かび上がった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポンプ-プローブ型電場変調分光法(EAPP法)を開発し、ヘテロ接合型有機薄膜太陽電池のドナーあるいはアクセプターを選択的に光励起することによりアクセプター層の内部電場の変化を測定できることを立証したこと、さらに今後の課題を明確にできたことから、進捗状況は概ね順調と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
前述したように、EAPP法によるアクセプター層とドナー層の両方の内部電場測定を行うことが最大の課題である。ドナー層の内部電場測定の感度が低い原因は、ドナー分子の膜内での配向状態にある可能性が考えられる。ドナーとアクセプターの積層順を変える、ドナー分子の種類を変えるなどして、ドナー層の内部電場を測定可能とし、光照射下での内部電場の形成機構を明らかにする。
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