研究課題
銅酸化物高温超伝導体Bi2212単結晶は原子層ジョセフソン接合(固有ジョセフソン接合)を内蔵し、人為的にジョセフソン接合を作らずとも天然の良質接合が利用できる利点をもつ。Bi2212を面内幅で数ミクロン以下まで微小化すると、層間方向の磁場中電気抵抗測定により単一磁束量子が侵入する様子を検知できる。さらに、単一孔を導入することで、磁束量子の逐次侵入が磁気量子抵抗振動として観察される。本研究では、両面微細加工により3次元的に試料形状を工夫することや高周波測定により、微小Bi2212単結晶の面直磁気抵抗を測定することで、磁束量子の配置や一本一本の侵入過程などの静的・動的情報を得ること、及び単一孔を導入することで現れる磁気量子振動現象の理解と応用を目指した。本年度は、5Kまでの広範な温度領域で磁束量子侵入を調べたほか、マイクロ波照射下でのフロー抵抗変調について調べた。10K以下においてもパンケーキ磁束の侵入に伴いジョセフソン磁束フローを誘起できることが分かったが、低温では磁束量子振動が不規則なものしか得られなかった。より制御された磁束振動につなげるため、開発を進めている磁気光学イメージング装置を用いて磁束量子や磁場分布の可視化を試みた。特に、昨年Nb/Bi2212ヘテロ構造において、NbとBi2212の磁束量子を磁気的に結合させて制御できる可能性を示したが、Nb中の磁束クラスターに含まれる磁束数を少なくするため、地磁気程度の弱磁場での磁束クラスター観測を実施し、10本程度のクラスター観察に成功した。将来的に、Nbの単一磁束量子と結合したBi2212中の磁束量子制御とその可視化につながる結果であると考えている。パンケーキ磁束侵入に誘起されたジョセフソン磁束の振舞いに関して本研究で得られた知見は、電子情報通信学会2022年総合大会のチュートリアル講演にて発表された。
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Physical Review B
巻: 104 ページ: 064504
10.1103/physrevb.104.064504
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