研究課題/領域番号 |
19K05260
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高桑 雄二 東北大学, マイクロシステム融合研究開発センター, 教授 (20154768)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 光電子分光法 / リアルタイム計測 / 酸化反応キネティクス / 酸化誘起歪み |
研究実績の概要 |
(1) p-Si(001)とn-Si(001)表面でのSiドライ酸化の反応素過程の比較から、SiO2/Si界面で生成された欠陥準位と介した過剰少数キャリア再結合がO2分子の解離吸着とSiO2生成と結びついていることを明らかにした。他数キャリア捕獲で帯電状態となった欠陥準位が化学的活性をもちO2分子が吸着し、少数キャリアの捕獲でSiO2形成が促進される。このモデルは多数キャリア捕獲を支配するショットキー障壁高さの変化と、少数キャリア捕獲が関節遷移か直接遷移かにより支配され、p-Siとn-Siの酸化速度の相違を系統的に説明できる。 (2) X線照射によるSiO2成長促進の原因が、光起電力効果によるバンド平坦化ではなく、SiO2中に染み出したSi電子状態で生じた電子-空孔対生成がSiO2/Si界面の欠陥準位を介して緩和であることを明らかにした。このような光照射によるSiO2成長促進は、これまではO2分子の解離による酸素ラジカル生成が原因と考えられていたが、基本的にはSiO2/Si界面で生成された欠陥準位と介した過剰少数キャリア再結合で説明できる。 (3)SiO2/Si界面酸化過程はsingle-step oxidationとdouble-step oxidationの競合で説明できることを解明し、両者は化学吸着O2分子を介して結び付けられていることを見出した。化学吸着O2分子の寿命以内で少数キャリア捕獲されればsingle-step oxidation、他の場合はdouble-step oxidationとなるモデルである。SiO2/Si(001)界面に化学吸着O2分子が存在することを、XPS観察から実験的に検証した。 (4) SiO2/Si界面での過剰少数キャリア再結合に結びついたSiO2成長は、バンドベンディングの変化から追跡できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度も引き続き新型コロナ流行のため国内会議や国際会議が開催されず、開催されてもWeb開催にとどまり研究成果発表の機会が制限されるだけでなく、SPring-8での共同利用実験も制限されたため、当初予定された計画の半分程度のデータしか得られなかった。そのため当初は2021年度までの研究計画であったが、2021年度の予算の一部を2022年度に繰越し、研究を遂行することにした。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度には以下の項目についての研究を計画している。 (1)酸素圧力と基板温度の急激な上昇にともなるSiO2/Si(001)界面での酸化反応過程を調べ、single-step oxidationとdouble-step oxidationの競合を解明する。 (2)SiO2/Si(001)界面に化学吸着O2分子の挙動とSiO2成長への並進運動エネルギー依存を観察し、trapping-mediated adsorptionとdirect adsorptionによるO2吸着過程の役割を解明する。 (3)single-step oxidationとdouble-step oxidationの競合に及ぼす酸化温度と不純物濃度の影響を明らかにし、過剰少数キャリア再結合過程の詳細を解明する。 (4)4年間の研究を統括して、Siドライ酸化における酸化誘起点欠陥発生と過剰少数キャリア再結合過程に基づく統合Si酸化反応モデルを構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ流行によりSPring-8への出張が中止されたので、本年にSPring-8での共同利用実験を行うための旅費に使用予定。投稿論文の英文添削料としても使用予定。
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