研究課題/領域番号 |
19K05265
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
松原 亮介 静岡大学, 工学部, 助教 (60611530)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 有機半導体 / 薄膜成長 / 核形成 / 水晶振動子マイクロバランス法 / X線回折 / in-situ解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、有機半導体薄膜の配向や結晶構造に大きく影響する薄膜成長初期過程の全体像を明らかにすることを目的としている。本課題の先行研究にあたる研究課題(課題番号:17K14106)において実施した水晶振動子マイクロバランス(QCM)法による解析により、薄膜成長初期において準安定的な状態を経由して安定核が形成されることを示唆する結果が得られている。そこで本研究課題では、QCM法に加えてX線散乱による構造評価も同時に行うことで、不安定状態から準安定状態を経て安定核が形成されるまでの動的な構造変化を明らかにすることを目標としている。 研究開始初年度となる令和元年度は、まずQCMとX線散乱同時測定のための装置開発を行い、同時測定においてX線の経路を妨げないような水晶振動子固定ホルダの開発、基板温度制御の高精度化、および発振回路の最適化を行った。つづいて後期(12月)には、実際に作製した装置を用いてSPring-8のBL19B2においてペンタセン成長初期におけるQCMと2次元X線回折の同時測定を行った。QCMによる分子吸着量の時間変化と、GIXDによる回折スポットの時間変化および小角領域における散漫散乱強度の時間変化を比較したところ、分子吸着量と散漫散乱強度は蒸着開始直後から増加し始めたのに対し、回折スポットはおよそ100秒程度遅れてから出現することが分かった。先行課題により蒸着開始から安定核が形成されるまでの誘導時間が100秒程度と見積もられており、本実験で回折スポットが現れた時間とほぼ同じだったことから、安定核の形成前に準安定状態は確かに存在しており、それは非晶質のような状態であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、QCMとGIXDの同時測定装置を作製し、実際にSPring-8にてin-situ測定に成功した。現時点で詳細な構造解析を行うことができるだけの結果は得られていないが、先行研究により示唆されていた安定核形成前の準安定状態の存在を支持する結果が得られ、二年目以降の研究方針が明確になった。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は引き続き放射光施設におけるQCM-X線散乱同時測定を進めていく。初年度の実験において、回折軸を動かす際に信号線に生じるわずかな歪みがQCM測定に影響をおよぼすことが分かったので、対策を施して再現性の高い実験を行いたい。また、今年度の実験では準安定状態が非晶状態であることが示唆されたため、回折測定に加えて、小角散乱あるいは反射率測定によりクラスターおよび薄膜構造の変化を解析していく予定である。
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