研究課題/領域番号 |
19K05265
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
松原 亮介 静岡大学, 工学部, 助教 (60611530)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 有機薄膜 / 薄膜成長 / 核形成 / 水晶振動子マイクロバランス |
研究実績の概要 |
本研究では水晶振動子マイクロバランス(QCM)法および微小角入射X線回折(GIXD)のその場同時測定により有機半導体薄膜形成初期における構造形成過程を明らかにすることを目的としている。二年目となる2020年度はGIXD測定を行うことができなかったため、研究室でのQCM単独測定をメインに研究を進めた。 まず、これまで実験を行ってきたペンタセン以外の材料として、クオーターチオフェン(4T)についてQCM測定を行った。4Tの薄膜成長過程においてもペンタセンと同様に、不安定状態(二次元気体)→準安定状態→安定核という三段階の状態の存在が示唆された。解析の結果、不安定状態の分子の吸着エネルギーはペンタセンに比べて1/4程度と小さく、不安定状態から準安定状態へ遷移する際の活性化エネルギーはペンタセンの約4倍大きかった。このことから4Tは分子が衝突しても凝集状態を維持しづらく、不安定な状態(二次元気体)で基板上に存在している時間が長いことが示唆された。 続いて、分子修飾の効果を調べるため、クオーターチオフェンの末端に炭素数8のアルキル鎖が修飾されたC8-4TについてもQCM測定を行った。その結果、不安定状態から安定状態に至る過程でペンタセンや4Tとは異なる挙動が確認された。末端をアルキル鎖で修飾した分子は液晶層を取ることが知られており、本結果も液晶状態が関与している可能性が考えられるが、これについては現時点で詳細なデータが得られておらず現在も実験、解析を進めている段階である。 また、上記の有機半導体分子以外にも、鎖長の異なるパラフィンや脂肪酸など様々分子群についてQCMによる薄膜形成過程の評価を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は当初予定していたSPring-8での実験を行うことはできなかったが、最終年度に評価する予定だったペンタセン以外の様々な有機材料についても前倒しでQCM測定を行った結果、GIXD測定の準備段階としての予備的な知見を十分得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
評価予定の材料については研究室で行う予備的な測定を終えることができたことから、来年度はSPring-8に装置を持ち込み、実際にQCMとGIXDのその場同時測定を行っていく。
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