Si半導体とAu金属は現代の情報化社会を支える基盤材料であり、常温常圧で互いに安定な物質であることは広く知られている。一方で、Au蒸着膜/Si基板界面 を形成すると室温でも非常に不安定になってしまうという意外な事実もある。 本研究では、長年議論されてきた「Au薄膜/Si基板界面において界面拡散層は存在するのか?それとも、界面は急峻なのか?ならば、低温でSiO2が表面に析出 す るのは何故か?」という学術的な問いに答えるため、雰囲気制御X線光電子分光を用いた動態計測によりAu薄膜/Si基板の系に特有の界面反応の起源を明らかすることを目的とする。 最終年度は、昨年に引き続き新型コロナウィルス感染拡大により研究施設等への移動が大きく制限されたことを受けて、高速スペクトル解析および高速深さ方向分布解析ソフトウェアの開発とワークステーションPCを用いた計測ビッグデータの順逆解析シミュレーションに注力した。高速スペクトル解析ソフトウェアの開発では、多量データの読み込みや演算処理のオーバーヘッドを徹底的に削るようコーディングを工夫し、マルチコアCPUによるマルチスレッド処理を実現することで、1秒あたり8000本程度のスピードでピークフィッティングできることを示した。高速深さ方向分布解析ソフトウェアの開発においても同様にマルチスレッド処理を実現し、スパースモデリング(L1ノルム正則化法)による学習と最大エントロピー法による推定を1秒あたり10分布以上のスピードで可能にした。計測ビッグデータへの適用においては、深さ方向分布100-1000万分布、およびに、それに対応した1億-10億本スペクトルのピークフィッティングを順逆解析シミュレーションで実証した。これらにより、将来的な時空間計測の高度化によるスペクトルビッグデータ化が問題になってくる時代に備え、高負荷な解析処理に対応できるようになった。
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