真空紫外域の極短パルスレーザーを用いた新しい分析技術の開発の一環として本研究では、その照射装置を開発することを目指し、レーザーを複数のビームに分岐し、光学ディレイをもうけ、軸外し照射 でかつ照射スポットを一部のみ重ねて照射することできる簡便な照射光 学系の作製を行った。昨年度までに、おおむね装置の基本部分は構築し、少しでも短波長レーザーに近い波長で行うことを目的に、非線形光学結晶を用いて、波長400nmの近紫外の極短パ ルスレーザーを発生させて実験を行った。 二本のレーザービームを微小スポットに絞った状態で試料上の同一場所を照射した。光学ディレイを用いて、-50~50 ps の時間差を 300 fs ごとに変化させて、300余個の照射痕の形状を走査型電子顕微鏡を用いて詳細に観察した。その結果、2つのビームに時間的な重なりが生じた、時間差 -300~300 fs の時だけ明確な干渉縞が観察された。また、さらにその干渉縞がみられた時間差範囲を、 30 fs ごとに時間差を変化させて照射し、照射痕形状の変化を観察した。その際、それぞれ片方のビームだけでは照射痕ができないところまでレーザ-強度を弱めて実験した。その結果、干渉縞が生じている条件では、単一ビームでの照射痕に見られた汚い溶融部分や、大きなデブリ粒子が見られなくなり、小さく浅い照射痕が形成出来ることを発見した。これにより、単独ビーム照射よりも、脱離される試料体積が大幅に減少した。この結果は、レーザー脱離分析における、分析分解能を向上できる可能性を示唆している。
|