研究課題
真空中で加熱すると反応性の高い表面が生成し(活性化)、残留ガスを排気する材料を非蒸発型ゲッター(NEG)と呼ぶ。NEGを利用したNEGポンプは、省エネルギー、大排気速度、無振動、軽量といった利点があり、加速器、電子顕微鏡等に広く使われている。しかし市販のNEGには、活性化温度が300℃以上、大気導入と活性化を繰返すと排気性能が低下する、といった欠点があった。本研究の目的は、排気速度が大きく、H2Oも排気でき、活性化温度が100~150℃と低く、大気導入と活性化を繰返しても排気性能が低下しない新しいNEGを開発することである。これまで、新しいNEGである無酸素Ag/Pd/Ti蒸着膜を開発したが、内面に無酸素Ag/Pd/Tiを蒸着した真空容器は150℃で3時間ベーキングしたあとの残留ガス測定で、無酸素Pd/Ti蒸着膜と比較して、H2とH2Oをあまり排気しないことがわかった。そこで、超高真空下で純度99.995%のTiを蒸着したのち、純度99.9%の窒素を導入して表面を窒化することで、新しいNEGである表面部分窒化高純度Ti蒸着膜を開発した。内面に表面部分窒化高純度Tiを蒸着した真空容器は、真空排気、185℃、6時間ベーキング、真空封止すると10-7 Pa台の超高真空を維持すること、真空封止下でH2、H2O、O2、CO、CO2の分圧は10-8 Pa程度以下に保たれること、高純度N2導入、大気曝露、真空排気、185℃、6時間ベーキングのサイクルを30回繰返しても残留ガスを排気することを見出した。さらに、表面部分窒化高純度Ti蒸着を放射光ビームラインBL-12Cの上流部、12A、BL-11の真空ダクトに応用した。また、表面部分窒化高純度Ti蒸着の放射光ビームラインへの応用の成果を国際会議MEDSI2023(2023年11月6-10日、北京)で報告した。
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