研究課題/領域番号 |
19K05282
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
石塚 尚吾 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究グループ長 (60415643)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 太陽電池 / カルコゲナイド / ワイドギャップ / CIGS・CGS / 薄膜 |
研究実績の概要 |
可視光の短波長成分を効率よく電気エネルギーに変換できるワイドギャップ(ここでは禁制帯幅1.6-2.0 eV)カルコゲナイド薄膜デバイスは、結晶欠陥や界面欠陥による性能律速が実用化を阻んでいる。本研究は、そのような欠陥の解析と制御技術の確立を目的とする。技術が確立されることで、民生普及が可能な安価で高性能、長期信頼性に優れる太陽電池や水分解水素生成装置の実現が期待できる。研究開始年度となる2019年度では、代表的なワイドギャップカルコゲナイド材料の一つである禁制帯幅1.7 eVのCuGaSe2に着目し、製膜方法や不純物添加の検討により多結晶薄膜粒内や界面の欠陥制御を行った。材料物性の評価だけでなく、実際にp-n接合光電変換デバイス(太陽電池)を作製し光応答特性の評価も行い、特にアルカリ金属添加による薄膜構造とデバイス特性の制御に注力した。2019年度の主な研究成果は、米国で開催された国際会議(ICCGE-19)で発表し、また論文化もしている(S.Ishizuka and P. J. Fons, J. Cryst. Growth 532 (2020) 125407)。そのほか、プレリミナリーな研究への取り組みとしては、CuGaSe2への銀(Ag)やビスマス(Bi)添加効果の検証なども行い、多結晶CuGaSe2薄膜の粒径制御技術の開発に向けた有用な研究成果も得られている。特にAg添加効果については2020年度も継続して検証を行い、Cu(In)GaSe2の物性制御を目指す予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タンデム型太陽電池のトップセルとして期待される短波長光吸収材料であるCuGaSe2薄膜と太陽電池デバイス作製を実施し、不純物添加制御等により物性制御(キャリア密度変化やそれに伴う空乏層幅変化、薄膜の表面Cu欠損相形成など)を実施した。電子線誘起電流(EBIC)や容量―電圧測定法などによる評価の有効性を示し、得られた研究成果の国際会議(ICCGE-19)発表や論文(S.Ishizuka and P. J. Fons, J. Cryst. Growth 532 (2020) 125407)発表も行っており、着実な進捗が認められる。
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今後の研究の推進方策 |
アルカリ金属効果を引き出すために、インジウム(In)元素の役割が注目されることから、今後は三元のCuGaSe2だけでなく、微量のInを添加した四元系ワイドギャップCIGSに対象を広げ、最近注目を集めている銀(Ag)添加の効果などの検証を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初導入予定であった、CuGaSe2製膜における原料供給装置(クヌーセンセル)の購入に必要な額に実際の予算配賦が満たなかったため、原料供給装置の構成に必要なヒーター、セラミック碍子支柱、タンタル熱反射板などを部品単位で購入し自分で組み立てることにしたため、少額ながら予算余剰を計上することができた。ただし、その余剰予算はTEMやSIMSなど、CuGaSe2薄膜の分析など研究推進に必要な外注分析用費用に充てる予定である。
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