ワイドギャップ(ここでは禁制帯幅1.6-2.0 eVの範囲をいう)カルコゲナイド薄膜デバイスは、可視光の短波長成分を効率よく電気エネルギーに変換し、タンデム型太陽電池のトップセル材料として有望であるが、結晶欠陥や界面欠陥による性能律速が実用化を阻んでいる。本研究は、そのような欠陥の解析と制御技術の確立を目的とし実施された。 研究課題最終年度となる2021年度では、引き続きワイドギャップカルコゲナイド材料である禁制帯幅1.7 eVのCuGaSe2のp-n接合界面の制御とバルク物性制御に注力し、CuGaSe2薄膜の製膜方法、薄膜表面の改質によるp-n接合形成の検討やn型バッファ層の製膜条件の検討などによる太陽電池デバイスの特性可制御性を検証した。CuGaSe2太陽電池を構成する単膜材料の物性評価だけでなく、実際にp-n接合光電変換デバイス(太陽電池)を作製し、光応答特性の評価を行った。 CuGaSe2薄膜の表面構造の制御によるp-n接合界面におけるキャリア再結合抑制を試み、Cu欠乏相の形成やアルカリ金属添加処理などによって実際にキャリア再結合の抑制を実証した。2022年度の主な研究成果として、三元系CuGaSe2太陽電池における第三者測定値(independently certified efficiency)として光電変換効率の世界最高値を更新したほか、これまで困難であったワイドギャップカルコゲナイド薄膜太陽電池の開放電圧(Voc)と曲線因子(FF)の向上に目途を付けることができた。特に従来のナローギャップカルコゲナイド系とは異なるワイドギャップ材料に特化したアルカリ金属添加手法を開発し、太陽電池デバイスの高性能化を実現した。
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