研究課題/領域番号 |
19K05288
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
田邊 健彦 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (30613989)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 協定世界時 / 水素メーザー / 時刻系信号 / 深層学習 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、深層学習の手法を活用して、代表者が所属する産総研計量標準総合センター(NMIJ)が維持・運用する時間周波数国家標準「UTC(NMIJ)」の、協定世界時(UTC、世界中で共有されている時刻の標準)への同期精度を向上させることを目標としている。UTC(NMIJ)は、水素メーザー型周波数標準器(HM)を周波数源として、国際度量衡局から毎月報告されるUTCとの時間差を参考にHMの周波数値を調整することで、UTCとの差が+/-約10ns以内に維持されている。これは世界トップレベルの精度である。本グループには過去数年以上に渡るHMとUTCの時刻差データの蓄積がある。そこで、この過去のデータを学習データとする深層学習からHMの挙動を予測し、その結果を参考に効率的にHMを運用することで、UTC(NMIJ)のUTCへの同期精度の向上を目指す。 この目的の達成には、「UTCとHMの時間差を予測するための手法の確立」が必要であるが、前年度までに、「一次元畳み込みニューラルネットワーク」という、深層学習の手法の一つを用いてこれに取り組んだ。今年度はこの成果を元に、予測結果を実際のHMの周波数調整にフィードバックするためのアルゴリズム開発に取り組んだ。後述の通り、昨年度中盤に予期せざる所属グループの人員変更が生じ、代表者の担当業務にも変更が発生したため、現在もアルゴリズムの開発に引き続き取り組んでいるところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所属グループにおいて予期せざる人員変更が生じたことで、昨年度中盤より代表者もUTC(NMIJ)の維持・管理に主導的役割を果たすようになった。これにより、本研究課題の進捗は若干遅れている。ただし、代表者自身が実際の水素メーザーの周波数調整も行うようになったことで、その経験を踏まえた、実務に適用し得るシステムの開発が進められていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
上述の通り、予測結果を実際の水素メーザーの周波数調整にフィードバックするためのアルゴリズム開発に引き続き取り組む。その際、これまでに用いた「一次元畳み込みニューラルネットワーク」以外の手法も幅広く検討し、その結果を総合的に議論する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、深層学習専用の計算機を購入して環境を整備する予定であったが、予想よりも計算コストが抑えられてその必要がなかったこと、また代表者の担当業務にも変更が発生したために次年度使用額が生じた。今後の研究の進展具合により、再び専用の計算機環境の必要性が生じた場合には、その費用に充てる計画である。
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