研究課題/領域番号 |
19K05289
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
吉本 則之 岩手大学, 理工学部, 教授 (80250637)
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研究分担者 |
葛原 大軌 岩手大学, 理工学部, 准教授 (00583717)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 有機半導体 / 結晶成長 / 2次元X線回折 / 電子線ホログラフィー |
研究実績の概要 |
有機薄膜形成過程の結晶成長機構を解明するため、放射光施設(SPring-8)に自作の真空蒸着装置を持ち込み、成膜中のin situ2次元X線回折実験を行った。この方法により有機薄膜の初期層および膜の形成過程の結晶構造を解明することが可能となり、有機デバイスの特性を決定づける基板上の第1層目の構造や金属電極上の構造、さらにpn接合形成の過程の詳細を究明することができる。また、有機半導体の分子構造と成長機構の解明や結晶構造の膜厚依存性を明らかにするため独自に分子の合成を行った。 成膜実験では、C10のアルキル鎖を有するC10-4T を試料として用いた。C10-4Tは出発原料であるチオフェンから独自に合成し、再結晶、昇華を繰り返すことで精製した。得られたC10-4Tの同定及び純度の確認は、核磁気共鳴分光法(NMR)と質量分析を用いて行った。X線透過用ベリリウム窓を装備した自作の真空蒸着装置および2次元検出器PILATUS300Kを用いてSPring-8、BL19B2でC10-4T薄膜の形成過程のリアルタイム2D-GIXD測定を行った。また独自に開発した温度可変ステージを用いて基板温度を40℃~70℃の温度域で制御し、基板温度を変化させながらによる2D-GIXDのリアルタイム観測を行った。実験の結果、アニーリング前後ではスポット位置が異なり温度変化による相転移によって結晶構造が変化したと考えられる。現在、キャリア輸送特性と結晶構造の関係を明らかにするため、これらの画像からの薄膜の結晶構造解析を試みている。 また、並行して電子線ホログラフィーによって有機半導体薄膜内の電位分布の観測を行うことにより、有機半導体薄膜の構造を総合的に明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射光施設(SPring-8)での成膜中のin situ2次元X線回折実験を12月に実施した。独自に合成した有機半導体Cn4Tについて低温での薄膜形成過程の観察を行った。鎖長の異なる有機半導体分子の合成を定常的に行なっている。電子線ホログラフィーによって有機半導体薄膜内の電位分布の観測を行うための有機EL発光デバイスの作製プロセスの整備が整ってる。
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今後の研究の推進方策 |
有機半導体成膜中のin situ2次元X線回折については、今年度は蒸着装置の整備を進め基盤温度と膜圧制御の自動化を行う。また、有機半導体分子の合成に関しては非対称型Cn4Tの合成を行い、結晶構造に及ぼす鎖長の効果の解明を総合的に目指す。電子線ホログラフィーによる有機半導体薄膜内の電位分布の観測については、JFCCとの共同で有機EL発光デバイスの観察を実施する。
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