研究課題/領域番号 |
19K05290
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 弘紀 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (60321981)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 磁場中溶融凝固 / 物理気相輸送法 / 磁気力 / その場観察 |
研究実績の概要 |
磁場,磁気力場を利用した新規プロセスによる材料の高品質化や高機能化を目指すにあたり,本年度は尿素の物理気相輸送法による結晶作製と観察を試みた.加熱・観察装置は新しい物を作製せず,既存の装置を改良することで雰囲気や観察位置の変更に対応し,磁場や磁気力場,温度などの条件を変えて基礎的データを収集した.併せて,作製条件の最適化に必要な炉内(試料作製空間となる試験管内)の温度分布測定を実施した.ガラスヒーター炉は円筒状であるから基本的には周方向に温度分布は無いと考えられるが,物理気相輸送法で作製した場合,結晶がほぼ同じ位置に析出していた.この原因として試験管内の温度分布と磁場分布の影響が考えられるため,作製条件の基本となる温度分布の確認を行った.温度分布の測定には,微小な白金測温抵抗体素子を試験管内壁に沿う円周上に4個配置した治具と,高さ方向に5個等間隔に配置した治具の2種類を作製し,それぞれ同時に各方向の温度分布を測定できるようにした.その結果,試験管の周方向に僅かに温度分布があることが分かり,長さ方向の温度分布と合わせて析出条件の最適化に用いることができるデータを得た.結晶作製に対する磁気力の効果としては,これまでの鉛直上向きに加え,装置の固定法を工夫することで鉛直下向きの磁気力下での結晶作製に成功した.その結果,上向きに磁気力が働く条件では結晶は磁気力無しの場合より上方に集中して析出していたのに対し,下向き磁気力の場合には下方に集中しており,結晶が析出する位置に対する磁気力の効果が明確になった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初,尿素の磁場中溶融凝固過程で現れたビウレットの針状結晶に対する磁気力場の影響を調べる計画であったが,予備実験を繰り返す中で,真空雰囲気での物理気相輸送によって析出する尿素微結晶に着目する方が本質的であると考え,新たに作製条件を探索することとなった.炉内の温度分布測定や保持温度,成長時間などの作製条件の探索を細かく行うことで当初の計画よりも遅れることとなった.
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今後の研究の推進方策 |
これまで,磁場以外には最高温度を変えることで条件探索を実施してきたが,最高温度を固定した上で保持時間を大きく変えた実験を実施する.これにより,保持時間が結晶粒の大きさや核生成などに与える影響を見極め,装置や結晶作製条件の最適化につなげる.これに加え,磁気力を積極的に活用した新たなプロセスの構築と材料作製を実施する.時間的に余裕があれば,尿素以外の結晶成長も実施し,試料によって異なる磁場の効果や作製条件の違いについて考察する.
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染拡大の影響による実験時間の制約とともに,参加を予定していた国際会議2つが次年度,次々年度へ延期されたことが理由として挙げられる.実験は年度後半に急ピッチで進めたことで遅れを取り戻しつつあり,装置改良などの目処は立っているので速やかに執行できる.旅費に関しても次年度に延期になった国際会議への参加などに使用する予定である.
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