材料の高品質化,高機能化は様々な分野で求められており,磁場などの外場を用いた材料作製プロセスはそれに応える方法の1つである.本研究では,磁場を利用した新しい材料プロセスの開発を目的として,強磁場および高磁気力場での結晶作製実験を実施してきた.特に最近では,磁場中での物理気相輸送法による尿素の結晶作製を試みている.尿素の場合,融点直下で熱分解が起こるため溶融凝固法での結晶作製は難しいが,物理気相輸送法では熱分解が起こらないため結晶作製が可能である.本研究で使用している加熱・観察装置の場合,結晶成長容器として市販の試験管を用いているが,試験管に接続したシリコンチューブ,ナイロンチューブを介して小型のダイアフラムポンプで減圧することで物理気相輸送法による結晶作製が可能になった.昨年度までに尿素結晶の析出する位置が磁気力の影響を受けること,即ち,上向き磁気力が働く場合には磁気力が働かない場合に比べて上方に,下向き磁気力下では下方に結晶が析出することを示してきた.しかしこれまでの方法では,結晶が試験管の内壁に析出しているため結晶をそのままの状態で取り出すことが難しく,成長後の結晶の観察が試験管越しに制限されていた.そこで本年度は試験管内に石英板を挿入し,石英板上に結晶を析出させることで成長後の試料の取り出しと観察を容易にすることを試みた.その結果,試験管中央付近にある石英板上であっても,内壁に析出する場合と同様に析出位置に磁気力の影響が現れること,析出結晶は石英板ごと取り出すことによって成長時の磁場方向が分かる状態で観察可能となった.析出した結晶に対する磁場,磁気力場の影響については継続して解析中である.
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