研究課題/領域番号 |
19K05294
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
末岡 浩治 岡山県立大学, 情報工学部, 教授 (30364095)
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研究分担者 |
山本 秀和 千葉工業大学, 工学部, 教授 (00581141)
中塚 理 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (20334998)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | パワーデバイス / 欠陥制御 / 計算手法 |
研究実績の概要 |
本研究の全体構想は,点欠陥の熱平衡濃度に与えるドーパントと不純物の影響,さらに各要素間の結合エネルギーについて,実験パラメータを用いることなく算出可能な手法として開発した“箱庭法”により計算し,その結果を結晶成長の連続体シミュレーションに組み込むことで形成しうる欠陥種と濃度を予測可能な計算手法へと発展させ,それを適用してSi,SiC,GaNなどパワーデバイス用半導体の高品位化に貢献することである. 2020年度は,IGBT用MCZ-Si結晶に添加される水素(H)と窒素(N)が点欠陥(原子空孔Vと格子間Si I)濃度に与える影響に注目し,結合エネルギー等に関する第一原理計算を行った.さらに得られた結果を結晶成長モデルに適用することで,点欠陥濃度を決定するとともに,デバイス劣化要因となる2次欠陥への影響を理論的に解明した. 得られた主要な結果は以下の通りである.(1)Nドープ,HドープのいずれにおいてもSi結晶はV-richとなる.その効果はNドープの場合,ドープ量の約10%の濃度分のVが増加し,Hドープの場合,ドープ量の約1%の濃度分のVが増加する.(2)Nドープにおいては,NがVと結合することでVの拡散が抑制され,その結果としてボイド欠陥の形成が抑制される.(3)Hドープにおいては,HはIまたはVと結合するが,安定な構造はIH2またはVH4である.Iと結合するH原子の個数の方が少なくて済むことから,Hドープは転位クラスターの形成をより抑制する.本研究成果に関係する2件の論文発表を行うとともに,結晶成長に関する国際会議において4件の発表を行った. さらに,SiパワーMOSFET用超高濃度Pドープn型Si結晶に関して,格子間Pの凝集に関する第一原理計算も行った.その結果から格子間Pの熱平衡濃度を求めるとともに,拡散障壁が0.1 eV 程度と非常に低いことも明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度にはIGBT用MCZ-Si結晶に添加されるHとNが点欠陥(原子空孔Vと格子間Si I)濃度に与える影響に注目し,結合エネルギー等に関する第一原理計算を行った.さらに得られた結果を結晶成長モデルに適用することで,点欠陥濃度を決定するとともに,デバイス劣化要因となる2次欠陥への影響を理論的に解明した.
得られた主要な結果は以下の通りである.(1)Nドープ,HドープのいずれにおいてもSi結晶はV-richとなる.その効果はNドープの場合,ドープ量の約10%の濃度分のVが増加し,Hドープの場合,ドープ量の約1%の濃度分のVが増加する.(2)Nドープにおいては,NがVと結合することでVの拡散が抑制され,その結果としてボイド欠陥の形成が抑制される.(3)Hドープにおいては,HはIまたはVと結合するが,安定な構造はIH2またはVH4である.Iと結合するH原子の個数の方が少なくて済むことから,Hドープは転位クラスターの形成をより抑制する.本研究成果に関係する2件の論文発表を行うとともに,結晶成長に関する国際会議において4件の発表を行った.
次年度は最終年度となり,SiパワーMOSFET用超高濃度Pドープn型Si結晶,SiC,GaNが研究対象となる.その準備のために,Si中の格子間Pの挙動に関する計算を完了しており,あとはPの凝集挙動の計算を残すのみである.また,SiCとGaNについては,空孔と格子間位置における形成エネルギの計算を行っており,あとは欠陥形成のモデリングを残すのみである.このように,研究はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は本研究の最終年度となる.IGBT用MCZ-Si結晶については,N,Hドープによる点欠陥挙動に関する計算は完了しており,論文投稿を行う.さらに,以下2件の研究を行う. (i) SiパワーMOSFET用超高濃度Pドープn型Si結晶において,ボイド欠陥の消滅に伴うP析出物の形成過程の解明と抑制技術を提案する. (ii) SiCとGaN結晶について点欠陥の物性やドーパントの活性化,さらにこれらの複合体形成などの基礎データを得る. 新型コロナウイルスの影響が続いているが,理論計算の研究であることから,最終年度も予定通り研究を進めることができる目算である.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた学会参加に伴う交通費が無くなり,その分を計算環境構築に関する消耗品等に充当したが,残額が生じた.次年度,本研究に用いている計算機の修理を予定しており,この残額はその費用に充当する.
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