研究実績の概要 |
RF-MBE法で成長したN組成の低いアンドープGaAsNを評価することにより、以下の2点を明らかにした。 (1)成長したアンドープGaAsNは高抵抗であるので、不純物濃度は無視できる。このようなGaAsNに対して、室温での光の透過・吸収測定からバンドギャップエネルギー(Eg)を求めたところ、報告されているEgの値[1, 2]よりも小さな値が得られた。さらに、誘電体モデルの計算結果[2]と同様に、GaAsNのEgは、N組成に対して飽和傾向を示さなかった。 (2)GaAsN では、フォトルミネッセンス(PL)ピークエネルギーが測定温度とともに高エネルギー側へ変化するS-Shape 特性が報告されている[1, 3]が、この S-Shape 特性を示す原因は、必ずしも明らかになっていない。そこで、アンドープGaAsNに対してPL測定を行った。高温で観測されるバンド間遷移のPLピークエネルギーは、測定温度に対して緩やかに変化した。これに対して、局在準位が関連する低温でのPLピークエネルギーは、測定温度に対して急激に変化した。さらに、PL励起光強度が増加すると、S-shape特性が観察されなくなる実験事実[3]は、S-Shape特性を発生させる局在準位の状態密度が小さいことを示唆している。これらのことから、S-Shape特性は、GaAsN 中の N 組成の揺らぎに起因するのではなく、伝導帯付近に形成されるN クラスター準位に起因するものと考えられる。 [1] H. Yaguchi et al., phys. stat. sol. (b) 228 (2001) 275. [2] K. Uesugi et al., Jpn. J. Appl. Phys. 36 (1997) 1574. [3] C. Chen, et al., J. Alloys Compd. 699 (2017) 297.
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