研究課題/領域番号 |
19K05296
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
須田 潤 中京大学, 工学部, 教授 (20369903)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 顕微ラマン分光 / ワイドギャップ半導体 / 熱応力 / 局所的電子物性 / 電子密度 / 電子移動度 / 抵抗率 / 金属積層薄膜電極 |
研究実績の概要 |
高温領域の電極付ワイドギャップ半導体の電極界面近傍の熱応力と電子物性の挙動を解明することは,次世代の省エネ大電力パワーエレクトロ ニクスシステムの高い信頼性の獲得という点で極めて重要である.本研究では,高温領域の電極付ワイドギャップ半導体のラマンイメージングの温度依存性の実験を行い,電極界面近傍の熱応力の3次元分布を求める.さらにLOPCモードのラマンスペクトルから,高温ワイドギャップ半導体の電極界面近傍の熱応力と局所的な電子物性の関係を解明するものである。今年度は高不純物濃度のn形GaN、n形β-Ga2O3結晶(c軸が電極面に対して45℃傾斜したサンプル)の積層電極付サンプルを作成して、主に高温ラマンイメージングの偏光測定を行い、高強度のラマンスペクトルの電極近傍と電極遠方の振動数シフト差を測定し、従来形の熱応力解析方法により熱応力の3次元分布を求めた。電極遠方を基準とした電極近傍のラマン線幅は顕著に広がっていることが観測された。従来の方法でラマン分光により求められた積層電極付n形GaN結晶の熱応力特性はFEMによる電極界面の熱応力計算結果と定性的に良く一致しているのがわかった。高温実験後にサンプルの半導体内部のCT画像を測定して4μm以上のクラックは発生していないことを確認した。また、高強度のラマンスペクトルと同時に測定されたLOPCモードに対して電子プラズマ振動を仮定した誘電分散解析を行い、高不純物濃度のn形GaN、n形β-Ga2O3結晶において電子密度、電子移動度、抵抗率を求めることに成功した。 これらの値は文献における代表値にかなり近く妥当な値であった。また、各ワイドギャップ半導体の各モードのラマンスペクトルの振動パターン解析をスーパーコンピュータによる第一原理計算を行い、熱応力解析で用いた高強度ラマンスペクトルやLOPCモードの振動パターンを解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において当初ターゲットとしたワイドギャップ半導体(GaN,β-Ga2O3)の積層電極付サンプルについて,高温ラマンイメージング特性測定により熱応力解析,電子物性(電子密度,電子移動度,抵抗率)の解析に初年度から成功しており,順調に進んでいるといえる。初年度で既に得られたn形GaN結晶電極遠方を基準とした電極近傍のラマン線幅の増大特性を用いてK-K解析から熱応力を求めることが可能であると考えられる。数件発表を予定していた国際会議(開催国:イタリア)がコロナウィルスの感染拡大で中止となったため、研究発表の公表が遅延した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はβーGa2O3についてはc軸が積層金属膜電極面に垂直な電極付サンプルを作成して、再度高温ラマンイメージング測定を行い、振動数シフトによる従来形の方法で熱応力を解析してFEMの解析結果と比較する。また同時にLOPCモードのスペクトル解析から電子物性(電子密度、移動度)を求める。初年度に得られたn形GaN結晶電極遠方を基準とした電極近傍のラマン線幅の増大特性を利用してK-K解析から熱応力を求めることを試みる。また、4H-SiC,6H-SiC、ZnO等のワイドギャップ半導体に関して電極付サンプルを作成して同様の測定を行い、LOPCモード等の振動パターンの解析をスーパーコンピュータで行う。得られた結果は随時、査読付き論文や国際会議論文に公表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月の第67回応用物理学会秋季学術講演会(上智大学)において"顕微ラマンイメージングによる高温状態の電極付n形β-Ga2O3結晶の電子物性に関する研究"の学会発表を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、学会が中止(学会発表は成立)になったため、2019年度の研究経費における旅費の残額が生じたものである。この残額と翌年度分として請求した助成金は、関連する研究テーマによる学会発表の経費及び査読付論文投稿費として使用する予定である。
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