前年度から引き続き、半極性面のAlNテンプレート高品質化、ならびに発光ダイオードの作製に取り組んだ。 (10-13)面AlNテンプレートに関して、初期AlN膜の形成温度を精密に制御することで、(11-22)面の形成を抑制しつつナノボイド密度の減少が可能となり、結晶性を向上できることを見出した。いっぽう、AlNテンプレート上のAlGaN成長ではGa原子が表面拡散しやすいため、ファセット成長が促進される結果、表面粗さが大きくなりやすい。また、成長層の発光波長については想定の平均組成よりも長波側にシフトする傾向がみられた。面内のGa拡散しやすさに起因して組成分布の偏りが発生したことによるものと考えられる。これらに対しては、成長条件を高V/III比などの拡散しづらい条件に寄せることで改善がみられた。今後はさらに圧力などの成長条件を検討して組成均一性、表面平坦性の高い(10-13)面AlGaN膜の成長に取り組んでいく予定である。 (11-22)面LEDでは不純物酸素の取り込みによりp層形成が難しいのが課題である。昨年の成長温度依存性に続き、V/III比依存性を調べたが、AlGaN中の酸素濃度はほぼ一定の結果であった。今後はさらなる成長パラメーターに対する依存性を調べるとともに、従来のLED構造から脱却したトンネル接合型LEDの採用も検討事項といえる。また、(10-13)、(11-22)面ともに、基板傾斜角が大きな影響をもたらすことから、異なる傾斜角を持つサファイア基板上の成長についてさらに検討を重ねていく予定である。
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