研究課題/領域番号 |
19K05299
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
宮本 克彦 千葉大学, 大学院工学研究院, 准教授 (20375158)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | テラヘルツ / 光渦 / 周波数可変 / 差周波発生 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、テラヘルツ波帯において周波数可変かつ固有モード性(モード純度)の高い任意次数の光渦発生を実現する。ここで光渦とは、らせん波面に起因した位相特異点を有し、ビーム断面内に軌道角運動量およびドーナツ型の強度分布を持つ光の総称である。 らせん型位相板などを用いた従来の光学デバイスで発生するテラヘルツ光渦は、波面変調によるものである。よってこれらを用いた光渦発生は、次数や発生周波数に制限を受けてしまう点が大きな課題であった。そこで本研究課題では、波面変調光学および非線形波長変換を用いることでこれらの課題を一掃し、固有モード性を保ったままテラヘルツ光渦の発生を周波数可変で実現する。 研究初年度である2019年度は、差周波発生を用いて周波数可変テラヘルツ光渦の発生を行った。具体的な手法として、2つの励起光のうち片方を光渦とすることで、光波帯の軌道角運動量をテラヘルツ帯へと転写させることに成功した。さらに、励起2波長光が集光された非線形光学結晶面はフーリエ面となることから、ガウスビームがソフトアパーチャーの振る舞いを果たす。波面変調による光渦発生で問題となる動径方向の高次モードは、この効果であるフィルタリング作用に伴い、発生が大幅に抑制された。一方、テラヘルツ光渦の周波数掃引については、ガウス分布を有した励起光波長を制御することで実現が可能であった。この際、発生するテラへルツ光渦の軌道角運動量の回転方向(符号)は励起2波長の大小関係で決まるため、符号制御にも実験的に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
周波数可変光渦の発生実現には、非線形波長変換法の一つである差周波発生を応用した。励起光として近赤外光の光渦(λ1)とガウスビーム(λ2)の2波長を用いた。差周波光は両者の光電場の積で与えられることから、その波面はテラヘルツ波帯へと転写され光渦として発生する。得られたテラヘルツ波帯の強度分布がドーナツ型であり軌道角運動量を有していることを確認し、軌道角運動量保存則を実証した。また、λ2の波長を掃引することで光渦次数を保ったまま周波数可変テラヘルツ光渦の発生に成功していることから、現在までの研究進捗はおおむね順調であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
らせん型位相板などガウスモードを波面変調して得られる光渦には動径方向の高次モードが必ず発生してしまうことから、発生した光渦の固有モード純度を担保することが困難である。そこで、本課題では波長変換技術を駆使し、これまでに前例のない任意周波数かつ任意次数の光渦を発生できる「テラヘルツ光渦シンセサイザー」を実現する予定である。 本年度は、光渦次数1のテラヘルツ光渦の発生に成功し、励起光の近赤外光渦の軌道角運動量がテラヘルツ波帯に転写されることを確認した。今後は、任意の次数・符号・円偏光を多次元でコントロール可能なテラヘルツ光渦発生を実現させる。
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