光渦発生におけるもっとも簡便な手法は、光学素子を用いた波面変換である。しかし、設計された周波数でのみ動作することから、光渦のもつ軌道角運動量を保ったまま周波数を自在に同調できなかった。そこで、本研究では非線形光学効果の一種である差周波発生を用いることで、周波数可変なテラヘルツ光渦の発生に着目している。さらに非線形フォトニクスに立脚した本手法は、軌道角運動量の高純度固有モードを各発生周波数において担保できる利点を有している。 本年度は、軌道角運動量を有した周波数可変テラヘルツ高次ベッセルビームの発生に注力した。ベッセルビームは、非回折性および深い焦点深度、自己修復効果を特徴とし、テラヘルツ光通信や超解像3次元イメージングへの応用に期待が集まっている。そこで、テラヘルツ帯において屈折率周波数分散が非常に少ないTsurupica樹脂によるアキシコンレンズを設計・作製し、開発したテラヘルツ光渦シンセサイザーを用いる事で、軌道角運動量を有した高次ベッセルビームの発生に成功した。 完成した、テラヘルツ光渦シンセサイザーは、軌道角運動量を主成分とした新奇テラヘルツ分光などへの応用が期待される。
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