研究課題/領域番号 |
19K05303
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
牧野 哲征 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (70311363)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 非線形フォトニクス / マテリアルインフォマティクス / 解探索 / 最適化問題 |
研究実績の概要 |
本研究では局所クーロンエネルギーなどが強相関電子系材料の非線形光学特性に与える効果について明らかにし、巨大な光非線形性などをもつ新たな非線形材料開発の基盤となる知見を得ることを目的としている。 初年度においては光非線形性に深く関連性のある線形光学特性について種々の酸化物薄膜材料に対して解明することに成功し、その結果を2編の原著論文としてまとめることができた。以下にその内容について概説する。 レーザー蒸着法を用いて、サファイア基板上に希土類酸化物薄膜を成長し、バンドギャップエネルギーの温度依存性を求めた。その依存性はフォノン分散効果に基づくモデルによって分析され、光学フォノンの温度などのフォノン関連のパラメータの観点から説明することに成功した。また、当該物質に関するフォノン特性は多種多様な半導体について取得された材料トレンドに従うことも明らかにした。 フッ素をドープした導電性ガラスとアナターゼ相酸化チタンから構成される接合界面を探求の対象として変調分光による光学評価を行った。フォトリフレクタンススペクトルに新しい光学アノマリーが見つかり、アノマリーのエネルギー位置は、バルク光学遷移に関連する位置よりもはるかに低くなった。また顕著な温度依存性が見られたため、その事実に基づいた考察を行い、新しいアノマリーが価電子帯と界面状態の間の光学的遷移に起因していることを同定した。酸化物の重要な界面における変調光学特性を明らかにすることにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の初年度においては、研究対象となるさまざまな酸化物材料の線形光学特性などを基礎的な物性を明らかにするとともに局所クーロンエネルギーなどの物理量を実験的に決定することを第一義的な目標としていた。 研究初年度としては次のような理由や根拠により、着実な進展がみられると判断するものである。その根拠としては、研究実績のところで記述したような光学特性・電気特性などに関するさまざまな成果を出せたことが挙げられる。また、上述したような成果を原著論文として世に問うこともできている。したがって、研究については計画と照らし合わせても順調に推移していると考えてよいように思われる。 昨今の新型コロナ禍のため、自粛要請に基づいて、当研究室においても実験的な研究や測定がストップしている。しかしながら、自粛要請の解除後に行う実験などの研究においてはその分を取り返すべく、より効率的な運営などを進めていく所存である。
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今後の研究の推進方策 |
研究初年度の実績などをステップとして2年目の実験的および理論的な研究をともに進めていく予定である。項目としては、電子構造計算による局所クーロンエネルギーなどの決定および非線形感受率の測定を通じた実験的決定およびその材料情報学的な解析への挑戦などが挙げられる。 具体的にはスーパーコンピュータなどを用いた第一原理計算を行い、局所クーロンエネルギーを計算の際のパラメータとし、研究初年度に行った実験で得られた誘電関数(分光スペクトル)を計算結果が再現するように最適化する。 また、非線形感受率の決定のために、実験室に現有の非線形分光法に基づく測定系を高感度化することをもくろむ。具体的には、超高速レーザとヘテロダイン測定法を組み合わせることによって現状よりも更なる高感度な測定系を実現する。これにより検出感度や誤差抑制の最適化を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ禍に関わる納期延長があり、研究初年度の間に納品を完了できる見込みがなかったため、いくつかの装置・物品の購入を見送ったから。
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