本研究では,時間に関する並進対称性を破ることによってテラヘルツ波の周波数を変換する方法を提案し,その実証実験を行うことを目的としています。昨年度までは,ヒ化ガリウム導波路の長さを1mmから2.5mmまで長くしたものを作製し,その側面からテラヘルツパルスを入射させました。テラヘルツパルスが導波路内部を伝搬しているときに外部からフェムト秒パルスレーザーを導波路表面に照射することにより,導波路の伝搬モードが変化するため,テラヘルツパルスの周波数が高周波数側にシフトすることを実験的に確認しました。また,それらの過程を理論的に考察するための,準解析的な理論の構築を行いました。 本年度では,外部から照射するフェムト秒パルスレーザーがオフの場合とオンの場合において,透過されるテラヘルツパルスのパワーの強度比をできるだけ正確に測定するために,測定光学系の改良を行いました。また,周波数変換されたテラヘルツパルスが,導波路を伝搬する際に光励起キャリアによって減衰しますが,その減衰率を実験によって大まかに見積もりました。具体的には,入射テラヘルツパルスが導波路へ入射する時刻と,外部から照射するフェムト秒パルスレーザーの照射時刻を相対的に変化させ,それぞれのタイミングにおいて,周波数変換されたテラヘルツパルスの強度を測定します。フェムト秒パルスレーザーの照射タイミングが早い場合は,周波数変換されたテラヘルツパルスが導波路を伝搬する距離は長くなり,逆に照射タイミングが遅い場合,伝搬距離は短くなります。このように,フェムト秒パルスレーザー照射後の伝搬距離を変化させることができ,それによって,導波路伝搬に伴うテラヘルツパルスの減衰率を見積もることができます。
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