電子ビーム励起(EXA)超解像光学顕微鏡のためのAl2O3/ZnO/Al2O3蛍光薄膜を開発した。収束電子線を蛍光薄膜に照射し光の回折限界以下の微小スポットを生成する。そのためには、平坦で均質な蛍光薄膜が必要である。そこで、原子層堆積(ALD)法により、Al2O3/ZnO/Al2O3蛍光薄膜を作製した。平坦性を向上させるためにAl2O3をバッファー層として挿入した。原子間力顕微鏡での測定の結果、二乗平均平方根(rms)粗さは、ZnOだけの2.4 nmからAl2O3をバッファー層を挿入した場合の0.5 nmに大幅に減少した。 次に、発光の空間的な均一性について評価した。それより、発光の空間的な均一性は、AFMで測定した表面粗さと関係があることがわかった。ZnO層だけと比較して、Al2O3を挿入することで、CLの強度のばらつきの標準偏差が小さくなった。 (Al2O3/ZnO)を積層回数を増やすことで、表面粗さが改善し、発光の空間的な均一性も向上することがわかった。ALDによって二重および多重ヘテロ構造のAl2O3/ZnO/Al2O3蛍光薄膜を成膜することができた。また、作製した蛍光薄膜に電子線を照射して発光強度を比較した。その結果、Al2O3/ZnO/Al2O3構造の蛍光薄膜において上層のAl2O3層がない場合に比べて、ZnOのバンドギャップでの発光強度が2倍になった。 バッファー層および上部のAl2O3層は、構造の表面を滑らかにするだけでなく、ZnOのCL発光を増強することがわかった。Al2O3/ZnO/Al2O3の二層構造または多層構造蛍光薄膜における原子レベルで平坦な表面と均一なCL発光により、EXA顕微鏡でのコントラストと信号雑音を改善した。これにより生きた細胞の動画観察が実現する。
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