研究実績の概要 |
本研究の目的は、軌道角運動量を持つ光渦(トポロジカル光波)を用い、新しいタイプの光と物質の相互作用を探求し、またその応用を開拓することである。今年度は、昨年度に整備した連続テラヘルツ波計測システムを用いた実験を進めた。まず、通常のガウスビームを用いた実験を行った。初めにテスト試料としてESR測定の標準試料として知られているDPPH(2,2-Diphenyl-1lpycrylhydrazyl)を用いた。0.1 THz, 0.115 THz, 0.13 THzの連続テラヘルツ波を用い、ESR信号を測定することができた。次に、グラフェン量子ホール系を用いた実験を行った。グラフェン試料は伝導測定による量子ホール効果測定のために、ホールバー構造への加工および電界効果トランジスタデバイスの作製を行った。試料を5K程度まで冷却し、電気伝導測定を行った結果、磁場5Tで明瞭な量子振動が観測された。しかし、テラヘルツ波によるランダウ準位間遷移を観測することはできなかった。ところが、ランダウ準位間隔より低いフォトンエネルギーのテラヘルツ波(周波数0.5 THz)を照射すると、電気抵抗率に変化が観測された。この変化はテラヘルツ電場によって電子の軌道が変化し、局在状態が変化したことに起因していると考えられる。 また、以前から続けていた擬似局在表面プラズモンへの軌道角運動量転写についての知見をまとめ、その他の物質系への適用について検討した。
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