今年度は昨年度の研究で明らかになったテラヘルツ波の検出感度に関する課題の解決に取り組んだ。従来の連続テラヘルツ波を用いた実験システムではフェルミレベル制御バリアダイオード(FMBD)の二乗検波特性を利用したテラヘルツ波の強度測定を行なっていた。 しかし、多くの光渦実験で想定される微小な強度変化を観測するにはダイナミックレンジが不足していた。そこで、FMBDのホモダイン検波特性を利用した連続テラヘルツ波の電場測定技術の開拓を行なった。そのために、マイケルソン干渉系型の光学系を組み、局所信号の偏光を制御することで電場測定を実現した。その結果、ダイナミックレンジが一桁改善した。また、偏光回転測定に適用した場合の角度分解能が7ミリラジアンから12マイクロラジアンに大幅に改善し、多くの研究に有用な手法となることがわかった。 また、パルステラヘルツ光源の電場イメージング技術の感度不均一性の改善に取り組んだ。電気光学サンプリングに基づいたこの手法では、観測される信号がテラヘルツ電場と観測に用いる近赤外光の強度の積に比例する。そのため、測定系の光学素子によって生じる近赤外光スポットにおける強度の空間不均一性が、直接テラヘルツ電場イメージの感度不均一性として現れる。そのため、従来の計測ではテラヘルツ電場の真の電場イメージを捉えることができていなかった。そこで、近赤外光の強度不均一性を補正する手法を考案した。その結果、感度不均一性が補正され、非常に均一なテラヘルツ電場イメージを得ることに成功した。これにより、光渦の電場分布をより正確に測定することが可能になった。
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