透明物体の位相像を観察するため,ワンショット観察可能な外乱に強い共通光路型の定量位相差顕微鏡の開発を目的とし,4方向のマイクロ偏光子アレイを各画素に配置したモノクロ偏光カメラと1/4波長板を用いて,幾何学的位相シフトにより1/4波長ずつシフトした4枚の画像を同時に取得し,位相像を得る方法について研究をすすめた.昨年度は視野の中央部と周辺部で同じ物体を観察したとき位相差が大幅に異なる誤差が生じた.その理由は,マイクロ偏光子アレイの配置を取り違えていたためと判明したため,正しい配置で計算しなおした結果,中央部と周辺部の位相差も一致し,透明樹脂の段差による位相像は0.566 radとなり,段差計から推定した位相0.560 radとよい一致を示した. 次に,動的試料としてミドリムシを観察した.偏光カメラのフレームレート60fpsで撮影できた.また,リアルタイムに解析を行い位相を表示することを試みた.撮影・位相計算の逐次処理を行った結果,12fpsで表示できた.これは計算にGPUを用いると高速化できる見込みである.偏光カメラはピクセルごとに偏光子の向きが異なるため,物体のエッジにおいて,本来の位相像と異なるアーティファクト(白飛び)が生じてしまった.このアーティファクト軽減のために,新たに提案した内挿フィルタとして5x5画素の適切な重み分布(4つの偏光で同様の空間周波数スペクトルを持つ)を設定したデータ内挿によって,従来の直近画素近傍近似による内挿よりさらにアーティファクトが低減できた.
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